さまざまなお仕事と天気の関係をお聞きする「天・気になるシゴト」。お話を伺うのはNEXCO東日本関東支社の５代目渋滞予報士・外山敬祐(とやま・けいすけ)さんです。
前回は渋滞予報士さんがどのように渋滞予測をしていらっしゃるのかお聞きしましたが、今回は具体的に天気との関係について教えていただきます。
―― 渋滞の起こり始めと解消は、どのような変化によるものでしょうか。
高速道路には「交通容量」と呼ばれる、渋滞を起こさずに車を流すことができる限界値があります。交通容量は、車線数などの道路構造や車種の割合、運転手の特性、天候などの非常に様々な要素が影響するため、場所ごと、あるいは日によっても変わってきます。この交通容量を超える車が、高速道路に入ってくると渋滞が発生します。
お風呂を思い浮かべていただけるとわかりやすいかもしれませんね。底の栓を抜いた状態でお湯を入れ続けてもある水量まではお湯が溜まらずに流れていきますが、蛇口を開いて水量を増やすとお湯は少しずつ溜まっていきます。その後、蛇口を閉めてそれ以上お湯を足さなければやがて風呂は空っぽになります。
渋滞もこれと似たような状況で、交通容量を超える車が高速道路に入ってくると渋滞が発生し、車がどんどん溜まり始めます。そのうちにあとから入ってくる車の数が減り、出て行く車の数が上回ると、渋滞はだんだんと短くなっていき、渋滞は解消へと向かいます。
―― 雨の降り始めなども渋滞の原因になりますか？
交通集中渋滞、いわゆる自然渋滞と呼ばれる渋滞が全体の3/4くらいです。、交通集中渋滞の大半が上り坂やサグと呼ばれるポイントで起きています。下り坂から上り坂に差し掛かる場所がありますよね。こうした場所を「サグ」というのですが、ドライバーがそれに気づかないでアクセルを同じまま踏んでいると速度が目減りしていってしまいます。そういう車がいると、速度が落ちてきた車に次の車が追いついてしまうので、ブレーキを踏みます。そうするとその後ろの車もブレーキを踏む、ブレーキ、ブレーキ、と連鎖してドミノ倒し的になると最後には止まってしまう車がいる…これが渋滞の原因なんです。
渋滞はとても敏感なもので、例えばゲリラ豪雨などの短時間豪雨がピンポイントで起こると、視界が悪くなることが原因となって、サグと同じように速度低下が後続車に伝播する現象が起こります。
―― 私たち利用者にとっては渋滞していない状態が好ましいのですが、渋滞予報士さんのお仕事の中では、何が一番の目的になりますか？
いつどこでどれくらいの渋滞が起こるかを予測するのは渋滞予報士の仕事ですが、目的としては少しでも混んでいる時間帯を避けていただいて渋滞を減らすことです。
例えば明日の9時にここが混みますよと予測して、9時に出かけようと思っている人が、じゃあ8時に出かけようとか、あるいは少しゆっくり11時くらいに出るか、というように行動変化をしていただけたら、ということです。
こうした行動変化があると予測は外れてしまいますが、目的としては達成ですね。けれど、オオカミ少年になってしまうと、「予測なんて当たらないじゃないか」といって、参考にしてもらえなくなる可能性もあり、そこがジレンマです。「当てるため」ではないとはいえ、正確性や信頼性も求められるんです。人間が相手なので予報を出すと結果が動いてしまうんです。そこが天気予報とは違うところになります。人が相手だからこそ面白い、という部分ももちろんありますが。
―― なるほど、では予報が当たると複雑なお気持ちになられるんですね。
渋滞を避けることができる人とできない人がいらっしゃいます。例えばお子さんと一緒だと朝すごく早く出たり夜遅く帰ってくるスケジュールにするのは厳しい可能性が高いですよね。
だから渋滞予報は、使える方に使っていただけたら。ほんの数％の人に時間をずらしていただくだけで実は渋滞が起きなくてすんだ可能性のある日があります。紙一重なんです。みなさんお出かけの前には天気予報をチェックする方が多いと思いますが、それと同じようにお出かけ前に「渋滞予報」をチェックするのも日常的になるといいなと願っています。
もうひとつは渋滞というものを知ってほしいと思います。渋滞が起きるメカニズムについてアンケートをとると、7割～8割くらいの方が「知っている」と回答されます。われわれはそのメカニズムが起こりそうな場所を皆さまにちゃんとお伝えし、標識を設置したりしています。
さて、次号は本企画恒例の「５つの質問」です。
取材協力：NEXCO東日本
▼渋滞予報士の「渋滞予報」はこちら
NEXCO東日本公式 渋滞予報士による渋滞予報＆おでかけガイド「ドラぷら」
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