そもそも梅雨とは?
同じ性質をもった空気の集まりを「気団」といいますが、この気団の境目は「前線」と呼ばれ、空気がぶつかり合って雨雲が発生しやすいエリアとなります。日本の南海上にある夏の太平洋高気圧(小笠原気団)と、湿った冷たい空気のオホーツク海気団のぶつかり合いによって日本付近に前線が発生し、その状態が一進一退のせめぎ合いを繰り返して長続きするのが梅雨という季節現象です。
なぜ梅雨が起こるの?
日本の梅雨の原因は、実はユーラシア大陸の地形と大きく関係しています。北半球には西から東に流れる二本のジェット気流があります。梅雨前線はその南側のジェット気流、亜熱帯ジェット気流と関係しています。
日本の西にはユーラシア大陸があり、そこには標高が4~5,000mのチベット高原が広がり、その南には8,000m級のヒマラヤ山脈があります。亜熱帯ジェット気流の軸は1万メートルぐらいの高さにありますが、チベット高原やヒマラヤ山脈の影響を受け、なかなか越えることができません。
二本目の北側にあるジェット気流は蛇行しながら日本付近で合流していて、これが梅雨のもう片方の主役であるオホーツク海高気圧を作ります。南回りのジェット気流の南にある太平洋高気圧とオホーツク海高気圧がぶつかり、その間に梅雨前線ができるという仕組みです。
さらに地上付近では、中国大陸から乾燥した気温の低い気流が梅雨前線に向かって流れ込み、太平洋高気圧の西の端から暖かく湿った気流が梅雨前線に向かって流れ込みます。このため、両方の気流がぶつかる地域では、対流活動が盛んになって短時間の強い雨を降らせ、大雨になる場合があります。
季節が進み、南ルートのジェット気流がヒマラヤ山脈やチベット高原を越えて一気に北上し、分かれていたジェット気流が一つになると梅雨明けです。しかも亜熱帯ジェット気流は北海道の北に北上してしまうため、北海道には梅雨がないと言われる所以です。
つまり、ヒマラヤ山脈やチベット高原を削ってなくしてしまうと、現在のような梅雨という現象はなくなるかもしれません。
梅雨入りは平年並み、7月から降水量多め
今シーズンも東シナ海から梅雨前線が顕在化しはじめ、5月14日頃から沖縄地方や奄美地方で梅雨入りとなる見込みです。いずれも平年より3~5日遅く、昨年に比べても遅くなるでしょう。
現在、太平洋赤道域の東部で海面水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」が続いていて、今後夏にかけてもエルニーニョ現象が持続する可能性が高くなっています。これにより、雨雲の対流活動の活発な地域や高気圧の勢力位置が変わり、日本の天候にも大きな影響を及ぼす可能性があります。一般的にエルニーニョ現象発生時の梅雨時期の天候は、西日本を中心に気温が低めとなり、降水量は西日本日本海側で多くなる傾向があります。
太平洋高気圧の北への張り出しにより梅雨前線も次第に北上し、6月に入ると西日本から東日本の各地では平年並みかやや遅れて梅雨入りとなる見通しですが、最初のうちは低気圧の通過に伴った一時的な活動でそれほど活発な状態にはならないでしょう。6 月半ばはいったん梅雨前線の活動も落ち着いて、いわゆる梅雨の中休みとなる期間もあり、降水量は平年よりもやや少なくなる予想もされていますが、寒気の影響で大気が不安定となると局地的に雷雨やゲリラ豪雨などが発生する日もあるでしょう。
7月になると南海上の高気圧の勢力が強まり、太平洋高気圧の勢力下で晴れる日もある一方で、湿った空気の流入(「湿舌」といったりもします)が本格化してくることで前線の活動も次第に活発となります。東~西日本では雨の日が多くなり、特に西日本では雨量が多くなり大雨となるおそれもあります。
昨年のような記録的な猛暑は回避できるかもしれませんが、湿度が高く不快な日が多くなるでしょう。
今シーズンの梅雨入り予想 | |||
地域 | 2019予想 | 平年 | 期間降水量 |
沖縄 | 5月14日頃? | 5月9日頃 | 平年並み |
奄美 | 5月14日頃? | 5月11日頃 | 平年並み |
九州南部 | やや遅い | 5月31日頃 | 平年並み |
九州北部 | やや遅い | 6月5日頃 | やや多い |
四国 | やや遅い | 6月5日頃 | やや多い |
中国 | 平年並み | 6月7日頃 | やや多い |
近畿 | 平年並み | 6月7日頃 | やや多い |
東海 | 平年並み | 6月8日頃 | 平年並み |
関東甲信 | 平年並み | 6月8日頃 | 平年並み |
北陸 | やや遅い | 6月12日頃 | やや多い |
東北南部 | やや遅い | 6月12日頃 | 平年並み |
東北北部 | 平年並み | 6月14日頃 | 平年並み |
梅雨入りと梅雨明けは誰が決めるの?
梅雨は、春から夏に移行する過程で、その前後の時期と比べて雨が多くなり、日照が少なくなる季節現象で、梅雨の入り明けには、平均的に5日間程度の「移り変わり」の期間があります。
梅雨入りと梅雨明けは気象庁(各地方・管区気象台)が発表しますが、明確な判断基準があるわけではありません。週間天気予報で曇りや雨がある程度続く場合や、前線の位置や太平洋高気圧の張り出し具合などの1週間先までの見通しをもとに、様々な要素を複合的に判断します。
現在は「○○日頃、梅雨入り(梅雨明け)したとみられる」という速報が発表され、梅雨の季節が過ぎてから実際の天候経過を考慮して日にちを確定させます。
なお、梅雨明けには「前線北上型」「前線消滅型」がありますが、天気傾向の変化が明瞭でなく梅雨明けを特定できない年もあります。
7 月には梅雨が本格化
西日本中心に梅雨末期の大雨に注意
梅雨期間のはじめ~前半に多く見られる「広範囲のしとしと雨」を陰性型の梅雨といいますが、一般的には7月に入り梅雨の後半または終盤に近付くと「局地性の激しい雨」を伴う陽性型の雨の降り方となります。
また南海上で台風が発生すると、遠く離れていても水蒸気供給のポンプの役割を果たし、梅雨前線の南側や低気圧の近傍に大量の水蒸気が収束し雨雲が集中的に発達するため、大雨による災害が起こりやすくなります。
九州北部豪雨や西日本豪雨などは記憶に新しいところですが、湿った空気と寒気がぶつかりやすい九州や山陰、北陸地方などを中心に、毎年のように人命に関わる重大な災害が起きていますので注意が必要です。
(がんちゃん)