「里地里山」を知る。クマと人が良い関係を築くには?

クマとの遭遇なんて山の奥深い場所だけだと思っていたのに、東京都内でもクマが目撃された?しかもその数もかなり多い!ということで目撃情報を発信している奥多摩ビジターセンター・大野さんにお話を伺います。

奥多摩ビジターセンター・大野さん

――ツキノワグマについて、もっと詳しく教えてください。クマは人に気づいたら避けてくれるのでしょうか?

もともとツキノワグマは臆病で、よほどのことがない限り、積極的に襲ってくることはないと考えられています。ただ、近年トラブルになっているケースに関しては、人が出したゴミの味を覚えてしまって、それを奪うために積極的に襲ってくるクマがいるせいではないかと言われています。
クマはとても頭の良い動物で、「自分が欲しい美味しいもの=ゴミを持っているのは人」だと学習してしまう可能性があります。

――クマは木の実を食べているイメージだったのですが?

はい、ドングリなど木の実も食べるんですが、ツキノワグマは雑食で、夏の期間はアリなどの昆虫や、アニメーションやキャラクターでおなじみのようにハチミツも食べますし、季節に応じていろいろなものを食べています。

――ゴミを食べる、というのは具体的にはどのようなものを好むのでしょうか?

考えられるのは、バーベキューの後に出た食べ残しなどですね。これを食べて「美味しい」と感じると、人里にその味を求めてやってくる可能性があります。

――クマが人里に出てくるようになったのには理由がありそうですね。

「里地里山」という言葉をご存知でしょうか。昔は人の住む場所とクマの住む場所には少し距離がありました。人が住む「里」には農耕地があり、クマの住む「奥山」と分断するバッファゾーンになっていたんです。でも今は生活の文化に変化があり、農耕地が放棄されたり、失われたりしてきました。

例えば奥多摩ですとユズ畑でユズの実が放置されていたり、庭の柿の木の実がそのままになっていたり。高齢化やその他の事情で仕方なくそうなってしまった例が多いのですが、それらの実をクマが求めて出てくるようになり、そのクマを追い払う人もいなくなり…人の生活が変わり、ツキノワグマが人の生活圏に入り込みやすくなったのかな、と。

クマも生きていくのに必死ですので、野生の中でエサを見つけたりするより、ゴミや農作物など、簡単に手に入れられるモノが人の生活圏にある、ということを学習してしまった結果、といえるかもしれません。

――これは人間の罪でもありますね。

一概に人が悪いということではなく、人の生活の変化にクマも適応してしまっている、といった方が正しいかもしれないですね。クマだってそれが本来の生活ではないですから。

今年の長梅雨のような異常気象ですと、木の実も育ちにくいなどいろいろな要因が複合的に絡まっているためハッキリとした要因はわかりにくいです。ただ、クマによる問題が起こっているというのは事実ですので、そういう事実を知っていただくのは大事かなと思っています。

昔は農耕地があり、自然と触れ合って生きていく中でそういう変化もわかりやすかったと思いますが、都市部で生活していると、いわゆる「自然」とは疎遠になりがちですしね。
クマに限らず、今の生活の変化や文化に沿って、今後の野生動物との折り合いというか付き合い方を考える機会を持っていただけると良いかな、と思っています。

奥多摩ビジターセンターでニホンジカについて学ぶ自然教室を開催したことがあるのですが、参加者の中には「東京都内にシカが住んでいるなんて!」とびっくりされる方がいらっしゃいました。

野生や自然にはこういうことがある、こんな生き物がこんな生活している、ということを知っていただくのも大切かなと思います。

――野生動物の被害に遭わないために、具体的に気をつけるべきことがあれば教えていただきたいのですが。

まずは予防という面においては、ゴミの始末をしっかりしていただくことはとても大切なことの内のひとつです。マナーを守り、食べ残しなどは持ち帰っていただけるようお願いしています。ゴミを原因とする野生動物の被害に遭うのは、その地域の住民になります。もちろん野生動物にも悪影響を与えます。「マナーを守る」を大前提として自然を楽しんでいただけたらと思います。

――奥多摩には見所がいっぱいですね。

これから紅葉の時期になりますので、標高の高い雲取山ですと10月の中旬頃から色づき始めて見頃を迎えます。
奥多摩駅付近などの標高の低いところは11月上旬から下旬まで紅葉が楽しめます。
町内には、およそ10km程度のハイキングコースがいろいろありますので、歩きながら紅葉を楽しんでいかれる方も多いです。ビジターセンターにマップなどがご用意してありますので、是非活用してください。

写真提供:奥多摩ビジターセンター

――都心から日帰りできるのもよいですね。

はい、その際には是非、奥多摩ビジターセンターにお立寄りください。


大野さん、ありがとうございました。
自然のちょっとした変化に気づくことも大切、なんですね。こちらから一方的に動物を悪者扱いするのではなく、自然や野生にも敬意を払い、どのように付き合っていくのがよいのか考えるのも大事だなと思いました。そして「マナーは守る」…これは必須ですね。

※大野さんのお話にもあった「里地里山」については、環境省HPでもその考え方を知ることができますので、ご参考ください。

取材協力:奥多摩ビジターセンター

(アール)

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