「【3.11特集】震災対策技術展ルポ「首都直下地震に備えるには」その2」の中で、阪神・淡路大震災の際に亡くなられた方の70%が窒息死や圧死など、家屋の倒壊が原因だったとお伝えしました。家に住めなくなって避難所や仮設住宅に入居し、5年間という月日を“仮の住まい”で過ごした方もいらっしゃいます。
生活面・安全面ともに「家が耐震化されている」というのは大きなポイントになります。いま、現状はどのようになっているのでしょうか。また、どのようなことをすれば良いのでしょうか?日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)・関さん、伊藤さんにお話を伺ってきました。木耐協については、以下ウェブサイトから引用させていただきます。
【地震災害から国民の生命と財産を守るため、「安全で安心できる家づくり・まちづくり」に取り組み、耐震社会の実現を目指す】ことを基本理念とし、地震災害の備えに対する啓発活動や木造住宅の耐震性能向上のための活動を行っています。
■「新耐震基準」でも心配!?
安全な建物を建築する上で基準となる法律「建築基準法」は1950年に制定されて以来、災害があるたびに見直され、強化されてきました。「旧耐震基準」と呼ばれる初期の基準から大きく変わったのは1981年。1978年に発生した宮城県沖地震で見直された「新耐震基準」で、壁の量が以前の倍になっています。ですが、この後に起きた阪神・淡路大震災(1995年)によって2000年6月に再度改正されたものが最新の「新耐震基準【現行】」で、壁の量だけでなくバランスの規定や、柱と壁の接合部分(抜け対策)、基礎の形状なども定められました。
同じ「新耐震基準」でも、現行のものとそれ以前に建てられた住宅では、かなり耐震性が違っています。こちらのグラフを見てみてください。
<熊本地震における木造住宅の建築時期別の被害状況>
これは国土交通省が発表している、2016年に発生した熊本地震における木造住宅の建築時期別の被害状況です。建築の時期が古い=旧耐震基準で建てられたものほど、倒壊・崩壊・大破などの割合が高いことがわかります。グラフ真ん中の「1981年6月~2000年5月の建物(新耐震基準)」に関しては、倒壊・崩壊・大破は旧耐震基準よりかなり少ないものの、完全とはいえないこと約8割でなんらかの不具合が生じているということにも、注目していただきたいと思います。
■関連死が直接死の4倍も
倒壊・崩壊・大破だけでなく、例えば中破だったとしても、自宅に住めなくなったら避難所や仮説住宅・車中泊などで生活するより他ありません。熊本の地震では、避難生活が長引いた事などによる「震災関連死」で亡くなられた方の数が、直接死者の約4倍にもなりました。持病の悪化、トイレの問題、ストレスなど身体的負担が大きかったのが原因といわれています。
木耐協・関さん、伊藤さん、ありがとうございました。本当にそうですね。「震災関連死」の方がこんなに多かったとはびっくりしました。確かに、慣れない暮らしは身体にも心にも相当な負担になりますよね。トイレが不足しているとか、避難所でインフルエンザが流行したとか、人だけでなくペットの避難の問題などもニュースになっていました。「家が倒壊しない」には、とても大きな深い意味をもっているんですね。次回は具体的にどうすればよいかについてお聞きしたいと思います。
(アール)