【特集】人と技術と防災の未来

前回(【特集】防災でも大注目される「ドローン」の活用について 【特集】ドローンを活用した防災と地産地防)までに、「GEORIS(ジオリス)」の概要と、ドローンを活用した地産地防の取り組み実例についてお聞きしました。広島県神石高原町(じんせきこうげんちょう)で実施された地産地防プロジェクトは大成功とのことで、未来への期待も高まります。防災科学技術研究所 特別研究員の内山庄一郎氏に今後の展開についてお聞きしたいと思います。


内山庄一郎氏(写真:本人提供)
1978年、宮城県仙台市出身。2003年から現職。入所後、最初の10年間で全国40万カ所の地すべり地形分布図の作成を完了させ、現在までの10年間でドローンを活用した災害初期対応での状況把握技術の研究開発に従事。趣味は家事、特にお掃除。

―― 広島県神石高原町のような事例が、今後も増えていきそうですね

神石高原町のプロジェクトは2019年に実施されましたが、2021年現在、神石高原町では私の関わらないところで担い手さんの再教育など、ドローン活用に向けた動きが着々と進んでいるようです。町にドローンが根付きつつあると実感していますし、防災の観点からは、「自分の町は自分で守る」という地産地防のコンセプトが目指す動きだと思います。

―― 全国的に広がりそうな手応えとしてはいかがでしょう

町にはその地域独自の文化や考え方がありますから、そのまま同じ形で広がることはないと思いますが、地産地防というコンセプトには共感の声をいただくことも多いので、その町に何かしらの機会やモチベーションがあれば、広がっていく可能性はあると思います。

また、地方自治体で“閉じた”活動である必要はなく、災害時の情報共有は、国や都道府県ともつながっていく仕組みを作っていくことも大切です。

オルソ画像のようなデジタル地図情報のメリットは、インターネット環境さえあれば情報共有ができることです。災害対応の基本は、自分たちの活動のために現場の情報を収集することから始まります。せっかくWebでオルソ画像が見られるわけですから、都道府県や国にも提供することによって状況を伝え、地方レベルで被害の全体像の把握や意思決定につなげることができればベストです。

システムとシステムがつながることを「連接」といいますが、国の情報共有の仕組み(※ISUTとSIP4D)と地産地防のシステムがうまく連接すれば、さらに迅速に、効率的に情報共有ができるはずです。今はそこを目指しているところです。


※ISUTとSIP4D
内閣府と防災科研が運営している国の情報共有の活動であるISUT(アイサット:インフォメーションサポートチーム)では、防災科研が作っている災害情報システムSIP4D(エスアイピーフォーディ)を使って、災害発生時には、各所からSIP4Dに災害情報をアップし共有し合うことによって、都道府県をまたいで災害対応ができる仕組みを目指しています。


GEORISのWebシステムをSIP4Dと連接させることで、例えば神石高原町の災害現場から地方公共団体と情報共有するだけでなく、都道府県や国まで連続的な情報共有をする…町の有志住民による災害現場での活動において瞬時に皆で状況が分かり合え、必要に応じて災害への対応ができる時代に、これまでとても考えられなかったようなことですが、少しずつ近づいているのではないかと思っています。

―― 過疎の村は高齢化が問題になっていることが多いと思いますが、ドローンはそんなに体力を使わないので、指先だけの操作でできるというメリットもありますよね?

そうですね。例えばドローンを山間地で水平飛行させてオルソ画像用写真を撮ろうとすると、斜面にぶつからないように慎重に飛行計画を立てる必要があります。地形図を見て等高線を1本1本しっかり読みとって、「この場所から150mの高さで飛ばしたとき、どこまでなら安全に飛行させられるか?」というように、正確に丁寧に考えて計画を立てなくてはなりません。こういった作業は、体力や腕力ではなく頭を使う勝負になります。例えば、消防職員には体力的に厳しい現場活動が求められますが、もしかしたらドローンは、女性消防職員の活躍の場を広げることにつながるかもしれませんね。

―― さまざまな先端のツールをうまく活用して、足りないところを補えばいいですよね?

ドローンもロボットですし、ロボットは人間をサポートするためのものですから、上手に活用した方がいいと思います。町や村の状況によってドローンに求められる役割は少しずつ違うでしょうが、都市間の物資輸送や携帯電話などの通信基地局として、大型ドローンが活躍する時代も遠い夢物語ではないと思います。

根室半島の地すべり災害調査でドローン飛行の準備をする様子(写真:本人提供)

―― 2022年度にはドローンに関する法律が大きく変わりますね

操縦技能を証明するものが国のライセンスとして制度化されます。現時点では民間ドローンスクールの定めた基準や認定基準は必ずしも一定であるとはいえません。今後は、少なくとも自動車の運転免許のように最低限の知識と技能を有することを国が証明してくれることになります。

あいまいだったりバラバラだったりした技能や知識の基準が一本化されるというのは、長い目で見れば大きなメリットになるのではないかと思います。


―― 高齢化・過疎化など多くの課題を抱えた日本の現状に、ドローンを活用した「GEORIS」が明るい未来をもたらしてくれそうな予感満載です。内山先生、ありがとうございました。

取材協力:国立研究開発法人防災科学技術研究所

内山先生の著書

『新版 必携ドローン活用ガイド―災害対応実践編―』(東京法令出版刊)

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