コロナ禍の「避難」について考える 〜「自宅が安全な場所」になるために〜

新型コロナウイルス(COVID-19)が世界各国に蔓延、日本では緊急事態宣言が発令され、外出の自粛や移動の制限、イベントの中止や店舗の休業要請など、厳重な警戒態勢になりました。手洗い・うがいはもちろんのこと、外出時のマスク着用や咳エチケットなど、注意すべきことを声高に叫ばれ、身も心も窮屈な日々が続きました。
そんな中で、深夜に緊急地震速報が鳴り響き、震度4以上の地震が立て続けに発生し、ここ1ヶ月で地震が頻発していることも報告されています。緊急事態宣言の発令中に「避難」せざるを得ない状況になってしまった地域もあります。

感染拡大を防ぐために、いわゆる「3密(密閉・密集・密接)」を避けることが提唱されましたが、災害時に「避難所に避難」した場合はこの3密を避けることはかなり難しい状況になることが予想され、各自治体では避難所の増設や人と人との距離を保つための工夫に頭を悩ませることになります。距離を保つためのマーカー、家族単位で使えるテントのような個室の設置、段ボールで囲われたベッドなど、新たに導入されたものもあります。

「避難」の真意は避難所に行く、ということではなく、身の安全を確保することにあります。大事なのは私たちそれぞれが自分の住んでいる場所・地域のリスクを把握し、災害時にどんなことになるか考えること。「避難」にはいくつかの選択肢があり、必ずしも「避難所」に行くことがベストではない場合もあります。

自宅・知人宅・車・・・今回は、いくつかの選択肢のうちの一つ「自宅避難」に関して、日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(以下、木耐協と表記)の関さん・伊藤さんにお話を伺いました。

――コロナ禍で震度4以上の地震が何度か発生しましたね。コロナ禍における避難所への避難についてさまざまなことが話題になっています。

この状況下、避難所で「3密」を避けるのはかなり難しいですね。できれば自宅に留まって避難できる、自宅が避難の選択肢にちゃんと入っているという状況が望ましいと思います。震災で家が崩れないか心配、という状態では、これが叶いません。
「家が丈夫だと安心」を一つのキーワードに、このタイミングで今一度ご自宅の安全性について考えてみていただけたら、という思いで木耐協でもいろいろと発信しています。

――緊急事態宣言の発令で生活がかなり変わりましたね。

外出自粛やテレワークで在宅時間が増えている中、住宅で快適・安全に過ごしたいと思う方は増えているのではないでしょうか。
また、先日テレビでも「在宅避難」に関する特集番組が放送されていました。「在宅避難」・・・まだ耳慣れない言葉ではありますが、在宅避難の観点からも自宅の耐震化を検討する人は増えていくのではないかと思います。私たちとしても耐震化の推進について、このタイミングでしっかり伝えていきたいと考えています。

――耐震化に対する取り組みについては、昨年ご紹介させていただきました。

【3.11特集】自分の問題だけじゃない!住まいの耐震化
【3.11特集】私の家は大丈夫? 住まいの「耐震化」が命を守る

過去に発信していたものに関しても、こんな状態になってかなり反響があったように感じています。自宅にいらっしゃる時間も長いでしょうし、このタイミングで今一度、ご家族で自宅の耐震性について話す機会を持っていただけたらと思います。

災害が同時に複数発生した場合の在宅避難のほかに、テレワークなどの自宅勤務も増えているせいか「自宅で仕事をしやすい環境を作る」というリフォーム提案を行う事業者が増えています。例えばデスクや書斎など、空間・環境の面だけではなく、そもそもそこ(自宅)で安心して過ごせるということがベースにないとダメですよね。木耐協として「家の安全性」は譲れない・変わらないところです。

画像提供:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

また、木耐協で「81-00木造住宅」プロジェクトを推進しています。これは1981年から2000年までに建てられた木造住宅の耐震化を進めよう、という取組みです。一般的に耐震化が積極的に進められているのは1981年以前に建築された「旧耐震木造住宅」ですが、2016年に発生した熊本地震では、1981年〜2000年に建てられた木造住宅にも被害があり、そのうち20%が倒壊・全壊してしまいました。建築基準は2000年にも見直しがあり、1981 年以前のものが「旧耐震」、1981年〜2000年が「新耐震」、そして「現行」になります。新耐震の「81-00木造住宅」では不安要素が多いのが現実です。

―― 新、と聞くと安心な気がしますけど、そうではないのですね。

名称だけ見ると、そうかもしれませんね。でも一番大切なことは、我が家を安全な状態にしておく、ということです。旧耐震、新耐震という区切りに捉われるのではなく、ご自身と家族を守ること、自宅を安全な場所にして避難場所を確保すると考えていただけるとよいかなと思います。耐震性の向上は地域の防災力向上にもつながります。

大切なのは「いつやるか」です。耐震化を有事の際に考えても間に合いません。できる限り早めに、今のうちに対策を講じておくことが必要です。

―― 緊急事態宣言が少しずつ緩和され、耐震診断も増えてくるとよいですね。

そうですね、コロナ禍では動きにくいことも多かったと思いますが、家にいる時間が長かった今こそ、家を安全な場所にすることを考えてみていただけたらと思います。
ただ、どこまで安心を求めて良いのか?については、各個人の考え方の問題になってきます。「どうすれば、自分と家族の安全確保ができるか」そのためにお金をどう使うか、どの程度使うか。

―― 耐震化については、地域によって温度差もあるとお聞きしましたが?

大きな地震が来る可能性を示唆されている地域と、実際に地震による災害を体験した地域では、耐震化に対して個人も自治体も積極的です。
でも、地震はいつどこでどの規模で起きるかわかりません。日本は地震大国ともいわれる国です。ましてや今回のように災害が複数同時に起きた際に「自分の家が安全でなかったらどうなるのか?」という想像力も必要になるのではないかと思います。

先にお話に出ましたが、避難所に避難してきた人が全員入り切れるとは限りません。感染症が蔓延した状況で、流通などが滞ると物資だってすぐに届く可能性は極めて低くなってしまいます。医療関係者や自衛隊が被災地に行きにくい状況も考えられますし、そうなってくると、これまで以上に自分で自分の命を守ることが求められます。
私たち全員がそれぞれ「自分の身は自分で守る」ことを強く意識する必要が、これからはもっともっと重要になると思います。


新型コロナウイルスに関するニュースを見ていると、災害に立ち向かうには「想像力」も必要なんだな、と思うことも多かったです。いま巨大な地震が発生したら? 川の氾濫、土砂崩れ、台風、竜巻…日本は世界の0.25%しか面積のない小さな国ですが、世界中で起きている災害の20%弱が日本で発生しているとも言われます。
新型コロナウイルスの蔓延が少しおさまりつつある時期ですが、これからゲリラ豪雨や台風のシーズンがやってきます。いうまでもなく地震は季節を選びません。
どうか、ご自身で身の安全を確保できるよう身の回りのことに想像力をたくさん働かせ、できることは今のうちに実行するようにしてください。木耐協・関さん、伊藤さん、ありがとうございました。

取材協力:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合

(アール)

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