薬用植物園と、葉の代表的な誤食について伺ってきました。今回は誤食の可能性としてはあまり高くないかもしれませんが、薬物植物園内にあるいくつかの植物を例に身近な有毒植物について紹介したいと思います。お話しいただくのは薬用植物園の中村さんです。
薬用植物園 主任研究員 中村耕さん
―― ところで、植物には何のために毒があるのでしょうか?
なぜ有毒なのか、についてはいろいろな説があり、これが有力という決め手のようなものはありません。有毒植物といっても「人間にとっては毒」というだけです。昔から地球上に生えていて、たまたま人間からみたらある種の植物が害だった、というだけです。人間にとっては有毒でも、虫や動物にとっては無害のものもありますし、逆に特定の動物にとっては毒になるものがあります。例えばアセビ(馬酔木)は馬が食べると食中毒になります。それでこのような漢字を充てたのかもしれませんね。
アセビ(馬酔木)
よく目にしている植物でも毒性が強いものが結構あります。薬用植物園でも栽培していますが、国内で有毒植物は200種類以上あると言われています。
身近なものの例として、排気ガスに強いキョウチクトウは公園や高速道路の緑化対策としても植えられていますが、実はこれ、猛毒で食べると頭痛・めまい・嘔吐・痙攣・意識障害などを引き起こし、時には死に至ることもあって注意が必要です。
キョウチクトウ
こちらはクリスマスローズ。可憐な花が人気ですがこちらも有毒植物です。口にするのはもちろん絶対に止めていただきたいです。

クリスマスローズ
観賞用の植物には有毒なものが結構ありますので、観賞用のものは観賞だけにとどめて絶対に口に入れない・食べないように気をつけていただきたいと思います。
名前に「ジャスミン」が付いていることから騙されてしまい、有毒植物である「カロライナジャスミン」を誤食したという、少し珍しいケースもあります。「ジャスミン」って聞くとお茶として人気も高く、よく目にするものですが「カロライナジャスミン」は有毒植物です。食べられそうな名前で他の例としては「ヨウシュヤマゴボウ」ですね。紫色のブドウみたいな実がなる植物です。名前が「〜ヤマゴボウ」なので食べられそうな気がするかもしれませんが、実はこれも有毒植物なので名前に惑わされないでください。
有毒植物でも薬の原料になる(製薬用に使われている)ものもあります。こちらのニチニチソウはマダガスカル原産で、食べると嘔吐・下痢、麻痺の症状が起きる有毒植物です。ただ、そんな有毒のニチニチソウ、実は薬の原料にもなるんです。
中村さん、ありがとうございました。こうしてみると有毒植物は身の回りにも結構あるんですね。
「家庭で栽培するときは園芸と菜園をしっかり区別する」「わからないもの(自信のないもの)は絶対に口にしない」「山菜採りはプロと一緒に」「その辺の植物を安易に口にしない」などしっかり守り、くれぐれも「誤食事故」の当事者にならないよう気をつけて、園芸や菜園を楽しみましょう。
取材協力:東京都薬用植物園
<ご注意>4月25日現在:新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため、3月28日から臨時休園になっています。ご利用やお問合せについては東京都薬用植物園の公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。
(アール)
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