よく似ていても一方は食用、もう片方は毒!葉もの植物の誤食について

前回の記事「これに関しては毛深いのがOK !? 薬用植物園でプロに聞いた「見分け方」」では薬用植物園の役割について伺いましたが、とても特殊で大切な施設ということがよくわかりました。今回は具体的な「誤食の事例」について詳しくお聞きしたいと思います。中村さん、よろしくお願いします。

薬用植物園 主任研究員 中村耕さん

―― この時期に多そうな葉を食用とする植物の誤食に関して教えてください

誤食として多く報告されているのはニラとスイセンを間違えるケースです。家庭園芸としてスイセンを栽培している同じ庭で、家庭菜園としてニラも栽培し、どっちがどっちかわからなくなって食べてしまうというケースがあります。
観賞用のものと食用目的のものを同じスペースで栽培すると間違えやすいので、柵や囲いなどで明確に場所を分けて栽培する・プレートなどを立てて管理するなどの工夫が必要です。また、他者からもらったものを食べて食中毒になるケースもあります。庭や畑で育てたものでも、明確になっていない(わからない)ものに関しては
・採らない
・食べない
・他者にあげない
この3つを必ず守るようにしてください。

左がニラ(食用)、右がスイセン(有毒)

ほかにもよくあるのはイヌサフランとギョウジャニンニクを一緒に栽培して間違えるケースです。イヌサフランは球根植物できれいな花が咲きます。これとギョウジャニンニクは、葉が出始めの頃はよく似ているのでとても間違えやすいです。
山菜採りなどでギョウジャニンニク=食用とご存知の方が、よく似たイヌサフランを採取して食べてしまい中毒になることもあります。イヌサフランが山中に生えているということはないと思いますが、ギョウジャニンニクの姿形と似ているから「食べられる」認識として記憶にあり、それが誤食の原因になってしまうのかもしれません。

こちらがギョウジャニンニク(食用)

こちらがイヌサフラン(有毒)

また、チョウセンアサガオについては根がゴボウと似ているし、蕾(つぼみ)がオクラと似ていることから、それぞれ誤食が多いですね。

ジャガイモのような食用植物でも、芽の部分や、日に当たって緑色になっている部分にはソラニンという有毒な成分が多く含まれていますので、充分気をつけてください。ギンナンは食べすぎると中毒になりますし、シロインゲンマメもよく加熱をしないで半生の状態で食べると食中毒を起こします。ただ、だからと言ってこれらの植物を全く除外してしまう、というのではなく、正しい知識を得ることで中毒にならないよう気をつけて楽しんでいただけたら、と思います。

家庭菜園で間違えやすいものに限らず、山菜採りで食中毒になる方もいます。有毒植物と食用植物が同じような環境・場所に生えていることもあり…例えばセリ(食用)とドクゼリ(有毒)、ニリンソウ(食用)とトリカブト(有毒)などは葉の形がよく似ているんです。トリカブトに関しては他にもモミジガサ(シドケなどとも呼ばれる)とも似ており、トリカブトを間違えて食べて食中毒になった例は結構多いですね。モミジガサはモミジ(紅葉)のようなかたちをした葉っぱの植物ですが、よく見るとモミジガサは葉の切れ込みが浅く、トリカブトは切れ込みが深いことがわかります。
トリカブトと間違えやすいもう一例はニリンソウです。ニリンソウは春に白い花が咲きますが、トリカブトの花は紫色で秋に咲きます。山菜でニリンソウを採る場合は「花がついているものを」確認していただくことが無難な方法ですが、花が咲いている時期でない場合はこの見分け方法が使えません。

ニリンソウ(食用)

モミジガサ(食用)

 トリカブト(有毒)

―― そうすると、素人にはわかりにくいですね。

そうですね。山菜採りなどは、ベテランの方や専門家と一緒に行っていただく方が良いですね。慣れていらっしゃらない人が自己判断やにわか知識で採取すると間違えるケースが多いので注意が必要です。

―― それでも間違って食べてしまったときはどうすればよいでしょうか。

迷わずすぐに医療機関にかかって、医師の診断を受けていただくことが重要です。医療機関に行く時には、可能な限り原因と思われる植物を一緒に持っていかれるのが良いですね。


中村さん、ありがとうございました。次回は身近にある観賞用植物の有毒性について伺います。

取材協力:東京都薬用植物園
<ご注意>4月20日現在:新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため、3月28日から臨時休園になっています。ご利用やお問合せについては東京都薬用植物園の公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。

(アール)

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