冬は火災が多く発生し、12月~4月に発生する火災が全体の4割程度になっています。その原因の多くは「電気」ですが、冬ならではの別の理由による火災にも注意が必要です。
「収れん」という言葉をご存じでしょうか。「収れん」とは太陽光が「物体」によって反射、もしくは屈折し1点に集中することです。小学生の頃、理科の実験で「凸レンズ」で太陽の光を集めた経験のある方もいらっしゃると思います。「自宅に凸レンズなんて置いてないよ~」かもしれませんが、凸レンズでなくても、凸レンズと同じような働き(役割)をしてしまう物体があれば、収れんが起きる可能性があります。
例えば
・水の入ったペットボトル
・鏡(凹面鏡)
・ガラス玉
・メガネ、虫メガネ
・調理用のステンレスボウルやステンレスのフタ
こうしてみると、いま、ご自宅にありそうなものばかりじゃありませんか?冬は太陽の高度が低いため、太陽光が部屋の内部に入りやすくなりますので注意が必要です。では、収れん火災を防ぐにはどのようなことに気をつけたらよいのでしょう?
・窓際に収れんの役割を担うような物体を置かない
・外出時にはカーテンを!
自宅の各部屋にどの程度光が入ってくるのか、範囲を確認しておくこともおススメします。特に空気が乾燥している冬は、火の燃え広がりやすい条件が揃ってしまうので、火災の規模が大きくなる傾向があります。
火災について、今一度情報をお伝えします。
■火災原因の第1位は「電気」
東京消防庁に取材したところ、アンケートの結果では「石油ストーブ」が危ないと思っている人が多かったけれど、実際に起こった火災の原因は「電気ストーブ」が多いということがわかりました。「もちろん普及数なども関係すると思いますが、電気だから安全、ということはないので気をつけていただきたいですね」とのこと。
① ストーブのそばに燃えやすいものを置かない
② 外出時や就寝時は必ず消す
③ 洗濯物を乾かすために使用しない
…などなど、気をつけるべきポイントをしっかり覚えておきましょう。
■火災発生のメカニズム
「燃える」という現象については、一般には発火して炎が出る状態をいいます。ですが、炎が出ていない状態が長く続く場合もあり、こうした現象については燻焼(くんしょう)といいます。
図のように、「燃える」条件として
① 熱エネルギー
② 可燃物(可燃性の気体・液体・固体)
③ 酸素(空気中には21%存在、そのほかのほとんどは窒素)
この3つの要素が必要となり「燃焼の3要素」と呼ばれます。熱エネルギーに関しては、発火源もしくは発熱源として、そのもの・または周囲の可燃物を燃やすために必要です。具体的には高温固体(炭・たばこ・線香など)、電熱体(ニクロム線など)、発炎体(ライター・ろうそくなど)から発生します。タバコはコンロや放火(放火疑いも含む)とともに主要な発火源となっています。また、電熱体を原因とする電気火災が増加しています。
■防火の原則3つ
① 火の用心(火災予防)
最も短い手紙として有名な「一筆啓上 火の用心 お仙泣かすな 馬肥やせ」にもあるように、とにかく「火事を出さないこと」は昔から暮らしの基本中の基本でした。日本の住宅は木造が殆どだったことからも「火の用心」は最も重要なことだったのでしょう。
② 出火を感知する(火災感知)
万が一火が出てしまったら、いち早く知ることが大事です。人が感知するには限界もあり、例えば就寝中など発見の遅れが命取りとなってしまいます。住宅火災では逃げ遅れによる死者が約70%を占めています。日本では2011年6月からすべての住宅に住宅用火災警報器(住警器)の設置が義務づけられました。
③ 火を消す(消火)
火炎が天井に達しないうちに消せば、損害を最小限にとどめることができるといわれています。防火区画の多い大規模なビルなどでも、発火源から周囲に着火する前に消すことが理想です。火を早く消すこと(初期消火)は、火の用心とともに、火災から命や財産を守る基本的な要素となります。
<火を消す方法5つ>
水をかける・酸素を遮断する・可燃物を除去する・火を吹き消す・燃焼反応を抑える
消火器はとても有効な消火用具ですが、消す対象によって種類が異なります。
・紙・木・繊維などの固形物の火災…A火災
・油・ガソリンなどの液体の火災…B火災
・電気設備の火災…C火災
※一般的にはどのタイプの火災にも適応できるABC加圧式粉末消火器が普及しています。
消火器の使い方は簡単ですが、いざとなったときにちゃんと使えるよう、日頃から防火訓練などに参加し、使い方の訓練をしておきましょう。
冬は暖房器具を使う、火を使う機会が増えます。火災に関する知識を少しでも増やし、日頃の防火に役立てていただければと思います。何はともあれ「火の用心」ですね。
(アール)