【防災特集③】平成30年7月豪雨を経験した広島市の取組 その1

「平成30年7月豪雨」…台風第7号や梅雨前線の影響により長く激しい雨が、西日本の広範囲にわたって土砂崩れや冠水・浸水などの災害を起こし、尊い命が犠牲になり、多くの人が避難を余儀なくされました。広島市では、平成26年8月20日に発生した「平成26年8月豪雨」の土砂災害に続き、大規模な災害を受ける事態となりました。
広島市は平成30年7月豪雨災害の記録に関する冊子を発行しています。ライフレンジャーでは、この冊子に沿って、コラム担当の防災士が広島市危機管理課の方のお話を伺ってきました。

―― このような記録冊子を作られたのは?

災害の記憶を風化させることなく次の世代へ継承するためです。災害対応の状況について記録に残し、災害に強いまちづくりのため、今後に活かしていきたいと思っています。

――「平成30年7月豪雨災害の記録 2018.07」の内容について教えてください。

大きく分けると①気象状況や被害状況などの災害の概要、②災害対策本部、③救助・捜索、④被災者支援に向けた取組、⑤他機関との連携、⑥災害ボランティア、⑦各区の状況、⑧避難対策等検証会議、となっています。

概況としましては、例えば広島市安芸区では7月5日〜8日の4日間に降った雨量の累計が489mmにもなったこと。これは7月の平均降水量(259mm)の約2倍にあたります。強い雨が続いた市域の東側に被害が集中、210箇所もの土砂災害が発生しました。
残念なことに死者23名、負傷者30名、行方不明者2名といった人的被害もあり、特に安芸区では18名の方が亡くなられる大変大きな人的被害が発生しました。

広島市では「平成26年8月豪雨」後に、災害対応の体制を強化しています。対策本部の設置や本部員会議はもちろんのこと、現地指揮本部内での会議や、自衛隊・消防局などとの連携、県内の広域消防相互応援…24時間体制で救助活動を行いました。

最大145箇所の避難所を開設し、ピーク時には8,423名の方が避難。長期化が見込まれましたので、暑さ対策やプライバシーの確保などにも留意した避難所運営を心がけました、

被災者支援においては、ワンストップ窓口の設置や仮住宅の提供見通しの早めの広報と早急な提供、日常生活に必要となる家電製品の提供も含め、不安や不公平感を極力なくすよう、平成26年8月豪雨の災害体験を活かした施策も行いました。

応急復旧から本格復旧にむけて、3年間を基本的な復旧期間とし、改良復旧に主眼を置いて、住民のみなさまが安心して住めるよう、防災対策の強化を図っています。
また「避難対策等検証会議」を設置し、検証を行いました。この検証をまとめたものが「避難対策などの検証とその充実に向けた提言」です。

―― どのような検証をされたのでしょう?

提言のコンセプトは「ひとりひとりの“我がこと”が重要」+「命を守るのは“地域コミュニティの力”」=「防災力」ということです。平成26年8月豪雨を教訓に災害対策の強化を図ってきたにも関わらず、平成30年7月豪雨でも人的な被害が発生したため、土砂災害前に発令された避難情報に対する市民の皆様の受け止め、それに基づく避難行動のあり方が新たな課題となりました。その実態や原因を明らかにした上で今後の防災・減災のために改善するため、学識経験者や被災区の自主防災会連合会の会長等を交えた会議を設置し、調査を行い、まとめられた提言になります。


この提言の内容については、次回お伝えしたいと思います。

取材協力:広島市危機管理室 危機管理課

防災士・アール

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