食べたら死んじゃう可能性も!身近な有毒植物に気をつけなくちゃ!

有毒植物の誤食による食中毒が今年も報告されています。6月にも有毒な園芸植物として知られる「イヌサフラン」の誤食で命を落とされた方がいらっしゃいました。イヌサフランは春に生じる葉が、ギョウジャニンニクとよく似ている植物で、過去にも数多くの事故が報告されています。

事故が起こっているのはイヌサフランだけではありません。スイセンやジャガイモなど私たちにとって身近な植物でも食中毒は発生しており、注意が必要です。

厚生労働省のウェブサイトを見ると、毎年のように事故が報告されています。ニュースでも取り上げられ、話題になっているにも関わらず、いったいなぜ、植物の誤食による事故はなくならいのでしょうか。

植物を食べる、という私たちの日常において、何に留意すべきか、またどんな危険があるのか『人もペットも気をつけたい 園芸有毒植物図鑑』の著者、東京農業大学教授・農学博士の土橋豊(つちはし ゆたか)さんにお話を伺いました。

土橋豊教授

『人もペットも気をつけたい 園芸有毒植物図鑑』

—— 植物の毒はどのようにして作られているのでしょう?

「毒」を作っている、ということではなく、植物は光合成や呼吸などの代謝をし、植物自身の生命の維持のために必要な物質をいろいろと作っています。そのうち、生命の維持に必ずしも必要ではないけれど、その植物の特徴となる物質も作っています。これら物質の中には、我々人間を含む他の生き物に対して、何らかの影響を与える物質が含まれ、人などに好ましい作用を及ぼすものを「薬」、好ましくない作用を及ぼすものを「毒」と呼んでいます。物質によっては薬にも毒にもなることが多く、まさに「薬も毒も紙一重」と言えるでしょう。植物はこれらの物質を作って外敵などから食べられないようにするなど、身を守っているのです。

—— 植物が有毒成分を作ることはわかりましたが、私たちが普段なにげなく親しんでいる身近な園芸植物にも有毒植物は多いのでしょうか。

そうですね。残念なことに、人気のガーデニングや家庭菜園など、園芸活動を実践する現場で毎年のように有毒な園芸植物が原因の健康被害が起きています。

海外の例になりますが、イギリスでは、イギリス園芸貿易協会が英国王立園芸協会と協力して、注意すべき有毒植物などを公表し、購入者はそれを参考にできるようになっています。

日本では野生植物に関しては有毒植物の情報はありますが、身近な園芸植物に関する情報は少なく、また、ネガティブな情報は歓迎されない風潮もありまして、専門書などもこれまで出版されていませんでした。そのため、身近に栽培する園芸植物に関する情報が少なかった現状があります。

—— 毒を持った植物、と思うと園芸からちょっと気持ちが遠のきそうです。

毒を持つ植物は意外と身近ですので、これらを園芸活動のシーンから全部排除するということではなく、人と有毒植物との適切な関係を築いていくことがなにより大切だと思います。

まずは、どの植物が有毒植物なのかを知ること。そして知る手段をもつこと。どのように付き合っていくべきかわかれば、もっと有意義で楽しく園芸活動も楽しめるのではないでしょうか。

—— 毒を作っている植物を毛嫌いするのではなく、身の回りにあるものに関してこちらが気をつけるべき、ということなのでしょうか。

そうですね。植物は人間の都合で存在しているのではなく、自然の中で自分のなすべきことをしているにすぎません。せっかく作った作物で中毒症状が出たり、辛い思いをしてその植物に対してネガティブになってしまったり、トラウマになるのも悲しいことだと思います。

安全で安心な園芸活動や人と植物の適切な関係づくりのお手伝いができればと思い『人もペットも気をつけたい 園芸有毒植物図鑑』を出版しました。

—— 本を拝見すると、ずいぶんいろいろな種類の有毒植物があるんですね。驚きました。

食べ方や量によって毒になるもの、熱を加えたら毒にならないものなど、さまざまですね。例えばダイズはたんぱく質や脂質・カルシウムなどのミネラルも豊富で、味噌や醤油をはじめ、豆の加工食品は日本の食生活になくてはならないものの代表のような農作物のひとつです。ですが、たんぱく質分解酵素であるトリプシンの作用を阻害する成分(トリプシンインヒビター)を含んでおり、生で食べ過ぎると下痢や嘔吐などを引き起こします。

モロヘイヤ・ズッキーニなどの人気の野菜類でも、中毒症状の事故例が報じられています。量はもちろん、どの部分を食すか、どの状態で食べたら良いのかなど、知っておくと安心なことがたくさんあります。


モロヘイヤやズッキーニが!? そんな身近な食べ物も「有毒」なものを含むとは。「有毒植物」の認識が変わりそうです。ところで「患者数が一番多い植物は?」という質問に、土橋教授の答えはもっと衝撃でした。それは、なんと「ジャガイモ」です。ジャガイモの毒に関する記事については次回書かせていただきます!

取材協力:東京農業大学

(アール)

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