「台風ソラグラム」を共同研究した横浜国立大学・筆保弘徳准教授よりシリーズ4回にわけて紹介します。第3回は「完成! 全国版台風ソラグラム」です。
横浜国立大学・筆保弘徳准教授
台風経路アンサンブルシミュレーションの結果を用いて、各地点の台風ノモグラムが完成しました(図5)。地点によって台風ノモグラムの円の左側が赤かったり、右下がオレンジ色だったりしています。この色の分布の違いが、場所によって強風となる台風の位置が異なることを示しています。
台風ノモグラムの見方の例として、注目する地点を横浜とした「台風ノモグラム@横浜」を見てみましょう(図4)(図5)(注8)。円の中心が横浜になるようにして、カラフルな円グラフとなっていますが、矢印に注目すると、横浜を中心に時計回りになっています。
台風の風は反時計回りの回転をしているので、これは逆回転しているように感じますが、台風の中心がそれぞれのセルに来た時の横浜で吹く風向を示すと、実はこのような時計回りになります。
この台風ノモグラム@横浜の分布から、台風が東や北東を通過して北よりの風が吹く時に比べ、北西を通過して南よりの風が吹く時に横浜では強風となる傾向を持つことが分かります。横浜に住む方は、静岡県に上陸する台風は南南東の強い風をもたらすので、特に警戒してください(注9)。
これまで存在しなかったプロダクトを開発したときは、その信頼性が問われるものです。この算出された台風ノモグラムは本当に正しいのか?自信をもって台風ハザードマップとして使えるのか?
我々はいろいろな角度から検証を行いました(注10)。様々な検証の結果、各地点の台風ノモグラムはその地形特有の地形の影響を適切に反映していることが明らかになり、日本全国における台風ハザードマップやリスク評価として信頼して利用できると結論づけました。
注8:図4は伊勢湾台風だけで作成した台風ノモグラム@横浜、図5は複数の台風で作成した台風ノモグラム@横浜であり、少しだけ分布が異なります。
注9:2011年台風15号は静岡を上陸し北東進したが、横浜では風向は南南東の最大瞬間風速は毎秒35メートルで暴風が発生しました。横浜市では強風んいよる転倒で死者1名を出しています。
注10:検証の結果は、以下の論文に記載しています。山崎聖太,筆保弘徳,加藤雅也,竹見哲也,清原康友,台風による強風ハザードの評価:台風ノ モグラムの開発(日本風工学会論文集投稿中)
第1回
全国版台風ハザードマップへの挑戦!>
第2回
300年待つ? 代わりに、台風経路アンサンブルシミュレーション>
第3回
完成! 全国版台風ソラグラム>
第4回
台風ソラグラムの展望>