気象庁では8月の実況と、2020年9月から2021年3月の見通しとして「ラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)」としています。ラニーニャとエルニーニョ、言葉はなんとなく聞いたような気がするけれど、どっちがどうだっけ…と小首をかしげる方も多いかもしれないので、大まかにまとめてみました。
■ラニーニャ現象とエルニーニョ現象
東太平洋の赤道付近(ペルー沖)の海水温が、基準値よりも0.5度高い状態が続くと「エルニーニョ現象」、低い状態が続くと「ラニーニャ現象」と定義されます。
日本からみると地球のほぼ裏側で起きている現象ですが、日本にも、そして世界中の天候に大きな影響を与えます。いわゆる「異常気象」と呼ばれるような現象の要因となると考えられています。
ラニーニャ現象とエルニーニョ現象を知るには、まず、どちらも発生していない平常時の状態を把握しておきましょう。
■平常時
太平洋の熱帯域には、東から西に向かって貿易風(東風)が吹いています。この風によって海面付近の暖かい海水が西に吹き寄せられています。このため、西のインドネシア近海では海面から数百mの表層に暖かい海水が蓄積しています。一方、東部の南米沖では、東風と地球の自転により、深海から冷たい海水が海面の近くに湧き上っているので、海面水温は太平洋赤道域の西部で高く、東部で低くなっています。このため、海面水温の高い太平洋西部では低気圧が発生しやすくなっています。
■エルニーニョ現象
東風が平常時よりも弱くなると、西部に溜まっていた暖かい海水が東の方へ流れ込み、東部では冷たい海水があまり湧き上がらなくなります。このため、東側の海面水温が平常時よりも高くなる範囲が広がり、低気圧が発生する海域が平常時より東に移動します。
■ラニーニャ現象時の状態
東風が平常時よりも強くなると、西部に暖かい海水がより多く(厚く)蓄積し、東部では冷たい水の湧き上がりが平常時より強くなります。このため、東側の海面水温は平常時よりも低くなります。ラニーニャ現象が発生すると、インドネシア近海の海上では低気圧の発生がより活発になります。
これらの状態が1年程度続く現象がエルニーニョ/ラニーニャ現象で、それぞれ数年おきに発生します。
■ラニーニャ現象発生、ということは、つまりどうなる?
気象庁によると、8月のエルニーニョ監視海域の海面水温は、基準値より 0.6度低い値で、今後冬にかけてラニーニャ現象が続く可能性が高い(70%)、と発表されていました。エルニーニョ現象は、地球温暖化や多雨・干ばつなど気象の異常と深く関わりがあるのでは?などと報道され、何かと話題になりますが、ラニーニャ現象はどうなのでしょう?
ラニーニャ現象時には夏の暑さ、冬の寒さが厳しくなるとされています。今年の夏を思い返してみると、気象庁の報道発表資料によると…
2020年(令和2年)8月の天候の特徴は以下のとおりです。
気温は、全国的に高く、東・西日本では記録的な高温となりました
全国的に暖かい空気に覆われたため、気温は高くなりました。特に、高気圧に覆われて晴れて厳しい暑さの日が多かった東・西日本ではかなり高く、1946年の統計開始以来、8月として東日本では1位、西日本では1位タイの高温となりました。
東・西日本太平洋側では、降水量は記録的に少なく、日照時間は記録的に多くなりました
東・西日本太平洋側では、高気圧に覆われて湿った空気の影響を受けにくく晴れた日が多かったため、月降水量はかなり少なく、1946年の統計開始以来8月として、東日本太平洋側で1位、西日本太平洋側で1位タイの少雨となりました。また、月間日照時間はかなり多く、西日本太平洋側では8月として1位タイの多照となりました。
「統計開始以来〜1位」という表現が見られますね。ということは、今年の冬も覚悟して迎えた方が良いのかもしれません。最新情報はライフレンジャーでこまめにチェックして、しっかり備えてくださいね。
(コラム担当・F)