東京では観測史上最も早い3月14日、サクラの開花が宣言され22日に満開を迎えました。平年値よりも12日早く開花、昨年と比較しても7日早く、満開も12日早かったようですね。気象庁の「2020年のさくらの開花状況」を見ても、一部平年や昨年より遅い地域があるものの、ほとんどの地域で「-(マイナス)○日」と早まっていることがわかります。
本来なら満開のサクラを見上げながら楽しく宴会!といきたいところですが、今年は新型コロナウイルスの影響でお花見も自粛モード。満開のサクラを見上げつつ静かに通り過ぎるほかない、と思うと少し寂しい気もしますが、こんなときだからこそ「サクラ」に関する話題を。
日本産のサクラは9~10種類あるといわれます。その中でみんなから一番よく観られているのは「ソメイヨシノ」です。通常「サクラ」と呼んでいるのはソメイヨシノで、九州から北海道まで、サクラの名所とされる場所にはソメイヨシノが植わっています。実はこのソメイヨシノ、日本にあるすべての樹が実は全部クローンだった!と話題になっていたのをご存知でしょうか。
サクラをはじめ、多くの植物は「接木(つぎき)」や「挿し木」で増やすことがとても多く、サクラは「接木」という手法で増殖させます。花が咲いているんだから受粉させてできた実からタネをとればいいんじゃないの?・・・いいえ、それがどうやら違うんです。そのタネから育った樹はソメイヨシノではなくなる!とのこと。正確には、ちょっと複雑な遺伝子学の知識がないとわかりづらくなりますが、いずれにしてもソメイヨシノのタネから育ったサクラがソメイヨシノとは違う花になってしまうのはいただけないですよね。…というわけで、日本全国各地で育っているソメイヨシノは全部ひとつの樹から生まれたクローンなんです。
「なんだ、だからサクラは一斉に開花するのか!」・・・とちょっと思ってしまったあなた、なかなかのサクラ通ですね。以前、「【お花見はいつまで?】全国のさくら、開花から満開までの日数一覧」 でこの話題に触れた事がありましたが、開花日とされる定義は“標本木で5~6輪以上の花が開いた状態となった最初の日”なので「開花予想=満開」ではなく、いわゆる「咲きはじめ」ということになります。もちろんある程度の開花に必要な条件はありますが、ソメイヨシノはすべてクローンであるため、開花の時期が同じになるのもうなずける話です。
でも、クローンであるがために残念なこともあります。ソメイヨシノが被子植物(果実や種を作る植物)として持っている性質のひとつとして「同じ樹の花は実を結ばない」ことです。上に書いた「タネ」の概念が根底から覆る話です。何百本と植えられたソメイヨシノ、樹は違っても元は同じなので実を結ばない=サクランボができないのはこういった理由から、なんですね。例外として、近くに違う種類のサクラの樹があれば、実をつける場合もあるようです。
ソメイヨシノにまつわるさまざまな噂や事実を知ってからお花見すると、また違って見えるかもしれないですね。来年は堂々と楽しくみんなでお花見ができることを祈りつつ、今は諸々気をつけて過ごしましょう。気温もジェットコースターのように上下し、汗ばむような日があったと思えば「花冷え」のように寒い日もあるなど、この時期らしい「三寒四温」を感じてしまいますよね。昨日暖かかったから…と油断せず、天気予報はまめにチェックして対策に役立ててください。
(アール)