ワインを造る人の心意気も含まれる。日本のワイナリーの挑戦・勝沼①

伊勢志摩サミットで提供された日本のワインが絶賛され、世界に知られるところとなりました。日本国内で育ったブドウ100%で造られたワインは「日本ワイン」と表示され、国内外から注目されています。 ライフレンジャーでは、日本のワインづくりの中心地・山梨県の勝沼で創業129年の歴史を誇る丸藤葡萄酒工業株式会社さんを訪ね、ワインと気象、そしてワイン造りに関するさまざまなお話を伺いました。

丸藤葡萄酒工業株式会社 代表取締役・大村春夫さん

ーー来年で創業130周年!日本のワイン造りの歴史がそんなに古いなんてびっくりしました。

うちではブドウ栽培とワイン造りの両方をしています。私は4代目になりますが、ここ山梨・勝沼で最初にワイナリーを始めたのは大日本山梨葡萄酒(メルシャン社の前身)で本格的にワイン造りを始めるというのでかなり大きな建物、第一醸造所を作りました。それ以前、この周辺(岩崎界隈)は見渡す限り桑畑でした。

ーー日本のワインといえば、山梨や長野、山形、北海道というイメージですが?

山梨・長野・山形・新潟・北海道は確かにワイナリーも多いですが、今では全国どこでもワインが造られていて、ワイナリーがないところ(県)のほうが珍しいのではないでしょうか。

ーーそんなに広がっているんですね。土地が違えば土壌も違うと思いますが、ブドウの品種にも影響しますか?

すごく影響します。ワイン造りにおいて「テロワール」という言葉があります。狭義では土壌、広義では風土という意味になります。私が国税庁醸造試験所でワインの研修をしていた昭和49年~50年頃にはまだ「テロワール」という言葉はありませんでした。フランスでは「ミクロクリマ」という言葉を使っていました。これは微気象という意味です。例えばボルドーのメドック地方には独特の気候がある、大西洋側から海風が吹くとか、川が流れているので水蒸気が上がるとか、石ころだらけだから石が温められて夜が暖かいとか…そうした狭い範囲の気候条件など、その土地特有の個性のことだと考えられています。

ところがその後、カリフォルニアワインが台頭してきて「ミクロクリマ」なんて誰も言わなくなったんです。その代わりに「テロワール」と言う言葉が使われるようになりました。

「テロワール」は、先ほど言いましたように広い意味で風土と訳されますが「テロワール」の中にはそこに住まい、おいしいワインを造るという高い志を持った人間の営みも含まれる”と。 日本の気候でワイン造り=ブドウづくりはとても大変ですが、こういうことを教わっていたので、私たちも頑張るしかありません。

実際、単なる気象条件だけでは、日本のワイン造りはすごく厳しいと思います。 雨の降らないカリフォルニアやアルゼンチン、チリ、ニュージーランド、南アフリカなどのほうがはるかにやりやすいと思いますね。でも彼らには彼らの悩みがあるかもしれません。例えば、天候が良すぎるとブドウの糖度が上がりアルコール度数が上がり過ぎて甘く感じるワインになってしまう、とか。

日本は気候でいうとフランスに近いかもしれません。フランスも雨がすごく少ない土地、ということではないですから。ただ、フランスの場合は収穫時期に雨が多くないので、日本のような問題はありません。日本のブドウづくりは雨との闘いなんですよ。


丸藤葡萄酒工業・大村さん、ありがとうございました。「テロワール」・・・とても深い言葉ですね。雨との闘い、ということは…今年は特に大変だったのではないでしょうか。次回も気になるワインとブドウづくりについてお聞きします。

取材協力:丸藤葡萄酒工業株式会社

(アール)

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