【防災特集⑤】「ここにいてはダメです」江戸川区ハザードマップの言葉は前からあった!?

「ここにいてはダメです」という表紙のキャッチーな文言が注目を集めた、江戸川区水害ハザードマップ。多くのメディアで報道され話題になりました。「ハザードマップ」というものの存在をこの機会に初めて知った方、改めて意識を向けられた方も多いのではないでしょうか。ライフレンジャーでは、このハザードマップを編集した江戸川区 危機管理室防災危機管理課にお話を伺いました。

―― 今回、かなり注目されたのでは?

この言葉がこれほどまで話題になるとは予想もしていませんでした。メディアなどで大きく取り上げられ、関心を持っていただけたということが、江戸川区のみならず全国に少しずつ、災害に関する考え方に変化をもたらすことができたかな、と思っています。

―― なかなか、このような言葉は書きたくても書けなさそうな気がするのですが。

「ここにいてはダメです」という言葉は、実は前から使っていまして…以前は江東5区で作成したリーフレットの折り込みの中に掲載されていたので目立たなかっただけかもしれません。それが今回表紙に使ったことで、皆さんの目にとまった、見てもらえたということではないかと思っています。 話題にはなりましたが、この言葉と表紙だけではなく、ハザードマップの内容も全部見ていただき、正しい情報を正しくご理解いただき、広域避難につなげ、自分の命は自分で守る、ということについて真剣に考えていただきたいですね。強い言葉を使うとか、話題になるためにとか、そういうことではないんです。

―― それにしてもインパクトのある言葉ですよね。

うーん。こちらとしてはわかりやすい言葉を使った、というのが正直なところで、先に申しましたように、込められた意味は広域避難につなげていただきたい、ということです。

―― 区民の方の反応はいかがでしたか?

賛否両論さまざまな意見を目にします。 水害ハザードマップをを配布した後、各事務所単位で住民の方に説明会を行いまして、600名を超える方が参加してくださいました。ハザードマップの活用の仕方や中身について説明させていただき、参加者のうち92%の方が「どちらかといえばわかった」「わかった」「よくわかった」とご回答いただきました。江戸川区が0メートル地帯で低い土地だということは、概ねの方がわかっていらっしゃることだと思います。そういった状況の中で想定される最大規模の水害が起きたらこうなる、ということは理解されているんじゃないかと思います。

ですが「広域避難をしますか?」というアンケートでは「48時間前にする」「24時間前ならする」を合わせると46%で、92%の半分程度でしかないという結果が出ました。 この結果をみて、我々としてはもっと住民の方々に啓発していく必要があると感じています。

―― 現在、避難のタイミングはどのようになっているのでしょう?

3日前から江東5区で検討を始め、共同検討開始の情報を区民の皆様に伝えていきます。 48時間前(2日前)になると自主的避難を呼びかけます。この段階だと車での避難も可能としています。 24時間前(1日前)になると広域避難の勧告を出します。この段階では自動車だと大渋滞で、避難が間に合わないおそれもあるので公共の交通機関を利用しての避難となります。

9時間前になると逃げることすら危険になります。命を守る行動として垂直避難をしてください、となります。

―― 垂直避難のリスクも記載されていますね。

はい。このハザードマップには浸水の継続時間を示しております。ライフラインが止まって、その状況が2週間以上続く…となると、一旦垂直避難してそのときは命が助かったとしても、浸水で逃げられないため2週間それに耐え続けなくてはならないことになるんです。

夏の暑い時期にエアコンが使えないのはもちろんのこと、トイレが使えない、ゴミがたまる、水が使えなくて衛生状態がかなり悪化します。そういったことが感染症などの二次災害を引き起こす可能性があるということも。…こういった状況をきちんとイメージしていただき、安全で浸水のない地域に広域避難をしていただきたいということをお知らせしています。

―― マップに浸水継続時間が記載されていますね。

この浸水継続時間が出たのは今回初めてのことです。前回(2008年)作ったマップには、ただ単純に高いところに避難しましょう、ということしか書いていませんでした。浸水継続時間を表記したことで「その期間中、ずっとそこにとどまらざるを得ない」ということをご理解いただくことが、広域避難(縁故避難・宿泊施設など)をしていただきやすくなるきっかけのひとつになればと思っています。

説明会でもこの時間が出たことで初めて、単純に高いところに逃げるのではなく広域避難に理解を示してくださった方もいらっしゃいます。ただ、まだ現実と捉えてもらえないことも多く「垂直避難はだめなの?」という質問もありました。

―― ハザードマップの制作については、どのような方が関わっていらっしゃるのでしょうか?

消防警察などの関係機関や防災の有識者にアドバイザーとして参加していただいています。


ありがとうございます。次回は「0メートル地帯」ならではの課題と取り組みについてお話を伺います。

取材協力:江戸川区危機管理室防災危機管理課

防災士・アール

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