2021年の気象を振り返る② 8月の西日本大雨

雨による災害は7月だけでは終わりませんでした。8月には広い範囲で大雨となり「観測史上1位」の更新ラッシュとなりました。このところ大雨の災害が毎年のように発生しており、避難の重要性はいうまでもありません。今年、避難情報や広域避難等に関して災害対策基本法等の一部を改正する法律が公布されました。新しい「避難情報に関するガイドライン」は今年5月20日から運用されており、変更のポイントは以下3点です。
①市町村が災害の状況を確実に把握できるものではない等の理由から、警戒レベル5は必ず発令される情報ではないこと
②避難指示は、これまでの避難勧告のタイミングで発令されることになったこと
③警戒レベル3は、高齢者等以外の人も必要に応じ普段の行動を見合わせ始めたり、避難の準備をしたり、危険を感じたら自主的に避難するタイミングのこと

危険を伝える情報としては、気象庁から発表される警報に関しても最大レベルの「大雨特別警報」が出ました。2021年を振り返る、第2弾はこちらです。解説は岩ちゃんにお願いします。


【8月の西日本大雨】

8月5日頃、日本を窺う台風が南海上に3つあり、そのうち台風10号は8日に関東の沖を通過していったが、台湾海峡付近でくすぶっていた台風9号がその後を追うかのように西日本に急接近し、同じ8日夜に鹿児島県枕崎市に上陸。翌9日朝に広島県呉市付近に再上陸、島根県を中心に24時間雨量が300mmを超える記録的な大雨となった。最大瞬間風速は出雲空港で36.5m/s、松江市34.7m/s、鳥取市33.8m/sなど各地で記録的な暴風が吹き荒れ、山陰道などでは通行止めとなった。(ちなみに、北日本でも大荒れの天気となり、えりも岬で43.8m/sの猛烈な風、渡島半島の函館市戸井泊では24時間雨量が305.5mmで観測史上1位の記録となった。)

その後、台風一過でホッとする間もなく、500hPaジェット軸の南側に早くも(秋雨)前線が出現。11日には九州に活発な雨雲が広がり始め、西日本豪雨の再来を思わせる広い範囲の大雨に、各地で警戒が呼びかけられた。

前線の活発化に伴い東~西日本に幅広く雨雲がかかり続け、特に九州や中国地方などでは記録的な雨量となり13日午前8時45分、広島市に大雨特別警報が発表された(その後、13時に大雨警報に切替わった)。翌14日には特別警報の範囲が拡大、2時過ぎに佐賀県と長崎県、6時前に福岡県、昼過ぎには前日に引き続いて広島市にも大雨特別警報が発表された。

14日夜22時の警報発表状況(参照:気象庁)

72時間雨量は佐賀県嬉野市で925mmに達するなど九州北部を中心に記録的な大雨となり、九州の六角川や中国の江の川上・下流部で氾濫が発生、佐賀県武雄市内で大規模な浸水被害等が出た。

九州北部の線状降水帯 (参照:気象庁 14日05時)

さらに15日には関東や甲信地方などにも活発な雨域がかかって局地的に猛烈な雨が降り、丹沢湖は1時間で104.5mm/hで観測史上最大、24時間雨量も340mm超えとなった。御岳山では48時間雨量で580mmに達し、岡谷市では土砂崩れで人的被害も発生した。

台風通過後に湿舌がのびて前線が活発化し、中国地方から大雨が始まって九州各地にも特別警報が飛び火、その後東海・甲信・関東にも大雨禍が広がった。この流れは3年前の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)災害ととても似た事象だった。異なっていたのは、前回は梅雨明け直前に発生し、今回は梅雨明け後に秋雨期との狭間の8月に起きたという点で、梅雨末期とも秋雨前線ともいえない希少な事例だった。(気象予報士:がんちゃん)


「梅雨末期の〜」という言葉を、ニュースなどでもよく耳にしましたね。それにしても観測史上1位を更新した地点がこんなにあったとは。来年は更新なしの年であるよう願うばかりです。
避難に関する情報もしっかり認識して「避難は早めに」をご家族皆様で徹底してください。

(防災士・R)

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