【天体観測】今年は満月!〜中秋の名月を愛でよう〜

9月に入り、なんとなく「暗くなるのが早くなったな」と感じていらっしゃる方も多いことでしょう。秋分(9月23日)を迎えた後は冬至(12月22日)にむけて昼間の時間が少なく、夜が長くなっていきます。夜が主役になり月や星の観察に適したシーズン到来です。

画像:国立天文台HP

秋の天体観測といえばなんといってもお月見が一番のイベントですね。今年のお月見(中秋の名月)は9月21日で、満月と同じ日になります。本コラムでも何度かお伝えしましたが、中秋の名月は必ずしも満月とは限りません。満月は太陽と地球と月の位置関係で決まりますが、月の公転軌道が楕円形のため新月から満月まで13.9日〜15.6日と変化します。
一方、中秋の名月は太陰太陽暦の日付で8月15日と決まっています。太陰太陽暦では「朔」と呼ばれる新月を含む日がその月の「朔日(ついたち)」となります。2021年は9月7日が旧暦でいう8月1日にあたり、9月21日が8月15日(十五夜)というわけです。ですので、十五夜がちょうど満月と同じ年もあれば前後にずれる年もあり、中秋の名月=満月とは限りません。2021年から2023年の3年間は、中秋の名月と満月が同じ日、それ以降は2030年まで前後にずれそうです。

2000年〜2030年 中秋の名月と満月の日

ちなみに「中秋」とは秋の真ん中のこと。太陰暦では7月・8月・9月を秋としています。この3ヶ月の真ん中の日=8月15日を秋の真ん中としているので「中秋」と呼ばれているのです。

画像:国立天文台HP

なぜ他の季節ではなく秋に月を愛でるようになったのでしょうか。空気が乾燥している季節といえば冬の方がもっと乾燥し、空が暗いのでは?なんて思いますよね。
月が見える高さ(高度)は季節によって変わりますが、冬の月が最も高く夏は低い位置にあります。月の位置が低いと、地表付近のチリや大気による減光、水蒸気などの影響によってクッキリ見える確率がかなり低めです。
冬は高い位置にあるものの「空を見上げて鑑賞する」という行為を考えると、高すぎると疲れてしまいますし、寒い夜間に空をずっと見続けるのは辛そうです。高さだけでいうと春と秋の月がちょうど良さそうですが、「おぼろ月夜」という言葉が春の季語でもあるように月が際立って美しく見える条件とは言い難いですね。

お月見に欠かせないお団子は、満月を表現していると言われます。実りの季節に感謝を捧げる意味もあり、農作物を供えて感謝し翌年の豊作を祈ったとも。中秋の名月が「芋名月」と別名があるのは、芋が主食だった時代に丸く煮た芋を供えた風習からとされています。

月を愛でる文化は平安時代に中国から伝わってきたと言われていますが、今のように電気もネオンサインもない暗い空に浮かぶ月を眺めてうたを詠んだり、お酒を飲んだりしていたのでしょう。なんとも優雅な話です。

(コラム担当:F)

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