2020年の気象を振り返る② 〜スーパー風台風10号〜

2020年の気象トピックとして注目すべきキーワード、第二弾は「台風」です。台風と言っても、昨年(2019年)のように「上陸した台風による被害」ではありません。今年の台風はここ数年とはかなり違った意味で特徴的なものでした。解説は、がんちゃん気象予報士にお願いしたいと思います。



今シーズンは12年ぶりに台風の上陸がゼロとなり、観測史上初めて7月の台風発生がゼロとなる異例ずくめの状況であった。フィリピン近海でいつもより海面水温が高く上昇気流が発生、日本付近では下降気流となって太平洋高気圧が強まり西に張り出したため、日本方面に向かう台風は東シナ海を北上せざるをえなかった。また、その発生数の減少がゆえに海水面温度が異常に高くなることで、台風の勢力を強靭化させる結果となった。

台風9号と台風10号

8月28日15時、フィリピンの東海上で発生した台風9号(メイサーク)は、31日夜になって大型で非常に強い勢力に発達し、9月1日には沖縄本島に最接近し、那覇市では44m/sの暴風を観測。その後2日には950hPaの非常に強い勢力を保持したまま東シナ海から対馬海峡を北東に進み、長崎県五島市上大津町(ごとうしかみおおづちょう)で42.7m/sの暴風を観測するなど、九州西岸を中心に猛烈な風が吹き荒れた。

台風9号の巨大な暴風域、955hPaで朝鮮半島上陸(参照:気象庁)

時を同じくして、9月1日21時には小笠原近海で台風10号(ハイシェン)が発生した。海水温が高いエリアを北西に進んだため、4日には非常に強い勢力に発達し、5日には南大東島で51.6m/sの暴風を観測した。過去最強クラスの台風が九州のすぐ西側を通るという最悪なコースが予想されたことから、同日夜に気象庁と国土交通省の共同記者会見が開かれ「(台風接近12時間前の)あす午前中に台風の特別警報を出す可能性」が大々的に報道された。

最盛期は 920hPa まで発達

肉厚の形を保って九州西岸を北上

九州各地で猛烈な風を観測 (気象庁アメダス)

先行する台風9号により海水がかき混ぜられて海面の温度が少し低下したせいか、台風10号は奄美近海で勢力をやや落としたため、結局特別警報の発表は見送られた。しかし、6日夜には九州全域が暴風域に入り、鹿児島県枕崎市(まくらざきし)で45.9m/sの猛烈な風を観測。7日午前中には対馬海峡を北上し強い勢力で朝鮮半島へ上陸。長崎県野母崎(のもざき)で59.4m/sの猛烈な風を観測 するなど九州北部でも猛烈な風が吹き荒れ、各地で倒木の被害などが相次ぎ、九州全県で約47万戸余が停電する事態となった。


台風による影響は、雨・風・高潮・高波、そしてそれらによって引き起こされる事象です。日本列島には、年間で約26個の台風が発生し、約11個の台風が日本から300km以内に接近し、約3個が日本に上陸しています。発生・接近・上陸ともに、7月から10月にかけて最も多くなります。(1981年~2010年/30年間の平均) 台風の接近・上陸による家屋の破損や農作物への影響、インフラや人的被害は、残念ながら後を絶ちまません。台風は、地震などの災害とは違い、比較的早い段階からある程度の予測がわかりますので、早めの対策を心がけるようにしてください。

(防災士・アール)

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