2020年が明けたとき、こんな状況になると誰が想像できたでしょうか。新型コロナウイルスという未だ謎に満ちたウイルスが世界中に蔓延し、日本で開催されるはずだったビッグイベントをはじめ、さまざまな行事や催しが中止となり、経済にも多大な影響を与えています。連日メディアで「コロナ」という文字を見ない日はないほど、世界が「コロナ」一色になりました。ワクチンの開発や薬の開発に期待が寄せられる中、まだしばらくは不便な状況が続きそうな年末です。
さて、毎年恒例の「気象を振り返る」コラムは、お馴染み・がんちゃん気象予報士に3つの事象を解説していただきます。第一弾はこちら↓
一昨年の西日本豪雨災害、昨年東日本を中心に未曾有の被害をもたらした台風19号や記録的な暴風被害をもたらした台風15号などの記憶が冷めやらぬ中、今シーズンも梅雨末期の甚大な大雨災害や台風による暴風被害などが発生した。今年は記録的な猛暑のさなかコロナ感染防止対策との両立を図る必要に迫られ、災害復興はさらに難局を極めたほか、防災や避難の在り方にも新たな課題が突き付けられた。
令和2年7月豪雨
7月3日(金)から梅雨前線の活動が非常に活発となり、九州南部では東シナ海から活発な雨雲が進入し、猛烈な雨が降り始めた。4日朝にかけては線状降水帯として組織化し熊本県と鹿児島県の県境付近で断続的に猛烈な雨が続き、午前4時50分に熊本県、鹿児島県に大雨特別警報が発表された。
球磨(くま)川上流部に降った多量の降水が、相対的に狭窄(きょうさく)部となる人吉盆地で溢れる形となり、球磨川やその支流で過去最大レベルまで水位が急上昇し、氾濫が発生した。人吉市では午前5時15分に避難指示が発令されたものの、建物の浸水や橋梁の破壊などが相次ぎ、熊本県内だけでも特別養護老人ホームの入所者を含む70名以上が亡くなる甚大な被害となった。
なお、6日にかけては九州北部でも複数の線状降水帯を伴う活発な雨雲がかかり、福岡県・佐賀県・ 長崎県にも大雨特別警報が発表されたほか、7日には筑後川の上中流部で氾濫、8日朝には久留米市内などでも大規模な冠水被害が発生した。
また、時を同じくして、南西からの湿った空気が流れ込み続けた岐阜県飛騨地方も総雨量700mmを超える記録的な大雨となり、8日早朝には岐阜県の東濃、中濃、飛騨地方、長野県の松本地域、乗鞍上高地地域、南部にも大雨特別警報が発表されたほか、14日には島根県の江の川(ごうのかわ)が氾濫、29日には山形県最上川で氾濫するなど、月末までの一連の大雨では東〜西日本の広い地域で記録的な雨量となった。下の写真は随所に残る豪雨災害の爪痕。温泉の配管が破壊された施設も(岐阜県新穂高温泉 8月末撮影)
コロナ禍の避難はメディアでも大きな課題と報じられ、避難そのものを改めて考えるきっかけになりました。年末年始、ご家族で今一度「避難」について話題にしていただけたらと思います。
(防災士・アール)