昼間の暑さが夜も続き、なかなか眠りに就くことができない、暑さで起きてしまう、あるいは冷房が効きすぎて寒くて目が覚めてしまった…暑い季節は睡眠に関する悩みを抱えている方も多いようです。
寝不足が続くと体調にさまざまな異変を招く原因になるだけでなく、気分がすぐれない、仕事が捗らない、などマイナスなことが多いです。今回は「睡眠」についてお伝えします。
■睡眠は休養のために不可欠
哺乳類や鳥類などの恒温動物(自らの体温を一定に保つことができる動物)は、外部からの情報を処理してカラダを働かせるために、大脳を発達させ進化してきました。脳はいろいろな情報を処理し、それぞれの担当部署に送られます。大脳には認知・思考・意欲を司る「前頭連合野」、触覚・視覚・感覚の処理を担当する「頭頂連合野」などがありますが、睡眠が不足するとこれらの機能が下がってしまいます。そうすると注意力や集中力が散漫になり、運動能力が低下し、感情のコントロールもしにくくなって事故や怪我の原因につながったり、あらゆる生活活動によくない影響と、自身の身体にも支障が出やすくなったりします。
常に良い状態を保つには脳の休息が必要不可欠です。この休息が「睡眠」です。ただ、睡眠中も全く動いていないわけではありません。眠っている間に「脳と身体の休養」と「脳内情報のコントロール」という重要な働きをしています。
■眠くなるのはなぜ?
眠くなるのは「恒常性維持機構」と「生体時計機構」の2つが総合的に補い合って働いているためです。
<恒常性維持機構>
脳やカラダの疲れを回復させるために睡眠が必要となり、眠気が起こるしくみです。長い時間起きていたり、激しく身体を動かす運動や長時間頭を使う作業をした日には、特に眠気を強く感じます。
日中活動をしている間に、脳は一種の老廃物である“睡眠物質”をつくります。これは眠りを引き起こす物質で、起きている間に少しずつ蓄積されていき“睡眠負荷”という状態になります。これは眠ることでしか解消できません。
<生体時計機構>
その日の体調や活動量、疲労感に関係なく“夜になると眠くなる”という体内時計によるもの。これは、脳の視床下部にある視交叉上核(しこうさじょうかく)というとても小さな器官によって調整され、夜になると睡眠を促すメラトニンというホルモンが分泌されます。
■睡眠障害にご注意を!
規則正しい睡眠を促す脳やカラダのコントロール機能がうまく働かずなんらかの異常が生じて発症すると定義されている「睡眠障害」。日本人の10~20%の人が睡眠障害を発症していると言われており、「不眠症」「過眠症」「概日リズム障害」「睡眠時随伴症」などに悩みを抱える人がいます。なんとなく眠りが浅い気がする、よく眠れていないな、と感じている人は「単なる寝不足」と軽視せず、悪化する前に医療機関にいくことをお勧めします。
■熱帯夜でも気持ちよく眠るには?
睡眠不足の状態は熱中症のリスクが高まるともいわれています。この時期はとくに「しっかりと睡眠をとる」ことを心がけてください。暑くて寝苦しい!と思われる方は、下記のようなちょっとしたコツを試してみてください。
<湯船に浸かって、少し汗をかく>
ぬるめのお湯に浸かり汗をかいて体温調整をする。
※入浴の前後には、コップ1杯ずつの水を飲むこともお忘れなく!
<頭を涼しく>
市販の冷却枕などを使う。冷えすぎないよう、タオルなどを巻いて調整しましょう。
<エアコンを上手に利用する>
就寝1時間程度前から、室温を少し低め(25~26度程度)に冷やすと寝つきやすくなるといわれます。寝るときには設定温度を28度前後に上げましょう。
<寝具を快適に>
涼感タイプの寝具や、夏用のタオルケット、ガーゼケットなど、自分にとってもっとも快適な寝具を使いましょう。
<就寝前のリラックス>
仕事のことを考えたり、寝る寸前までスマートフォンやPCなどを見ていると、気持ちも脳も寝る準備に入れません。気になることを一旦忘れて気持ちをリセットするために、美しい景色の写真を見たり、楽しいことを思い出すなど、5分でよいので自分自身をリラックスさせる時間を持ってください。
<就寝前のお酒・コーヒーは控えめに>
アルコールを飲むと眠くなりやすくなるものの、睡眠のリズムが崩れ夜中に目が覚めやすくなるというデメリットがあります。また、コーヒーやお茶・紅茶に含まれているカフェインは神経を興奮させたり利尿作用があるため、夜中に何度もトイレに起きてしまうなど、睡眠のリズムを狂わせる原因になりかねません。
ヒトにとって、睡眠はとても重要です。寝不足は身体や精神の不調を起こす原因にもなりますし、睡眠不足そのものが「健康な状態」とはいえません。暑い日が続く時期はいつも以上に体力を奪われ疲労しています。今こそ睡眠を見直し「よりよい睡眠」に改善する機会をもっていただけたらと思います。
(健康管理士・F)