これに関しては毛深いのがOK !? 薬用植物園でプロに聞いた「見分け方」

季節は春。植物が芽吹く季節です。春野菜も店先に並び、旬のものをいただく楽しみが増す時期でもありますが、そんな中、ニラと間違えてスイセンを食べてしまった、いわゆる「誤食」のニュースが報じられました。数ある植物の中に存在する「有毒植物」…私たち人間が食すと中毒を起こしてしまう危険性のある植物についてお伝えしたいと思います。お話を伺うのは薬用植物園の主任研究員・中村耕(なかむら こう)さんです。

薬用植物園 中村耕さん

―― 薬用植物園はどのような植物園なのでしょう?

植物に関する指導・取締りに向けた植物鑑別試験や調査研究などを行ったり、薬用植物の正しい知識の普及などに努めています。
例えば法律で規制されている植物が植えられていないか、健康食品やお茶の中に医薬品にしか使えない原材料が混在していないかどうかなど、主に顕微鏡を使った植物の形態学的な特徴をとらえる鑑別試験を行っています。

薬用植物園の歴史は古く、昭和21年の戦後間もない頃から始まりました。当時は医薬品の原料確保を目的として、ここ(東京都小平)に東京都小平薬用植物栽培としてスタート。その後、都庁の薬務課の直轄で薬務行政の一つとして薬用植物の収集・栽培を行っている植物園という位置づけになりました。平成15年には試験研究機関として、東京都健康安全研究センター(医薬品や化粧品、食品などの検査をしている)の所属になりました。

―― 日頃私たちが目にしたり使っているものにも大いに関係ありそうですね。ですが、薬用植物、というのはあまり馴染みがない感覚です

ここで栽培している植物は、試験検査をするための標本となる植物、とご理解いただけるとシンプルかもしれません。実際に医薬品の原材料として使われる漢方薬の原料になる植物、民間薬の原料になる植物、製薬原料植物として医薬品の原料の成分が含まれている植物など薬用植物の研究栽培ですね。

神代植物公園や小石川植物園などは、園芸用の植物を中心に栽培して来園者に鑑賞を楽しんでいただくことを目的としていますが、この植物園では、先ほどお話ししました「標本となる植物の研究栽培」という位置づけになりますので、園芸用ではなく野生種に近い形で栽培しています。

もう一つ大きな特徴は、法律で規制されているケシなどの植物も研究栽培していることです。ケシの栽培は国の許可が必要で日本国内では数箇所しか栽培されていません。柵越しにではありますが、一般の方に見学いただくこともできます。(ただし今年は状況によって休園となるかもしれません。)

二重の柵が巡らされたケシの栽培場

また、薬用植物に関する研修機関の位置付けもあります。来園者は一般の方だけでなく、医学薬学を学んでいる方や看護学生さんなどが薬の原料になる植物を学ぶために来園したり、保健所の職員の方がケシの見分け方(法律で規制されているケシと、規制されていないケシの違い)などを学んだりします。

―― 見分けがつくように、というのは具体的にはどのように?

法律で規制されているケシは茎や葉が毛深く無くツルツルしています。また、葉が茎を抱くような形で付いており、葉のギザギザ(切れ込み)が比較的浅いのが特徴です。これらの特徴を見分けるための知識を学びます。

こちらは栽培可能なアイスランドポピー(シベリアヒナゲシ/ケシの一種)

―― 見ただけでわかるほど、差が明らかなものなんでしょうか?

そうですね、ケシに関してはこの特徴が割とわかりやすいんです。ただ、今回のテーマにあるような、食用植物と有毒植物を間違えたことによる誤食事故を防止するために一般の方を対象とした有毒植物の研修も行われていて、薬用植物や生薬の知識の幅を広げていただくための、啓発機関としての役割も担っています。


中村さん、ありがとうございました。次回はいよいよ葉を食用とする植物の誤食について伺います。

取材協力:東京都薬用植物園
<ご注意>4月13日現在:新型コロナウイルス感染症拡大防止対策のため、3月28日から臨時休園になっています。ご利用やお問合せについては東京都薬用植物園の公式ウェブサイトで最新情報を確認してください。

(アール)

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