「風呂敷」という言葉を聞いて、どのような用途を思い出すでしょうか。「自宅に風呂敷があり、普段から使っているよ!」という方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。ましてや「なぜ風呂敷で防災?」と疑問に思った方も…風呂敷は昔のもの!と思い込んでいらっしゃるあなたも、これを読むと風呂敷の見方が変わるかもしれません。
風呂敷の魅力を伺うのは、日本風呂敷協会・大工原智子(だいくはら さとこ)さんです。
大工原智子さん
■風呂敷は、いつぐらいからどのようにして広まったものなのですか?
風呂敷の始まりは不明です。誰か特定の人が考案したり、あるところから伝わっていったというものではないと考えられます。布があると、それで何かを運んだり、掛けたりして便利に使用するというのはごく自然に行われることです。織りあげた布で赤ちゃんを包んだり、防寒のため身にまとったり、なにかに掛けてホコリよけにしたり・・・一枚の布を工夫して、様々な目的に使用されてきたことが想像できます。風呂敷の歴史は布の歴史と共にあるとするのが自然なのではないでしょうか。
また、風呂敷は日本独自のものと思われがちですが、実は海外でも同じように布でものを包む文化があるんです。ただ、海外の場合はどちらかといえば、シンプルな包み方が多いのですが、日本では、一枚の風呂敷を運ぶ・まとめる・掛ける・収納する、など様々な目的や中身に合わせて工夫し、多様な包み方で便利に使用しているのが独特ですね。
■名前の由来を教えてください
「風呂敷」と呼ばれるようになったのは諸説あるんですが、まずは風呂場で着替えをするとき、他人とくべつするために布で包んでいたという説ですね。それから、昔は今のように湯船があってお湯をはって浸かるスタイルではなく、蒸気風呂で、蒸気を均等に拡散させるために大きな布を敷いていたのが由来、という説もあります。風呂に敷いてあるような大きな包み布、というニュアンスでしょうか。でもどの説も断定できるような明確な根拠が示されているわけではないんです。江戸時代の辞書でも説が割れているくらいですから。
■どのような種類があるのでしょうか?
風呂敷は一見、正方形に見えるかもしれませんが、実は少しだけ長方形になっています。幅は一定になっていますので、風呂敷のサイズは通常「幅」で表現することが多いです。
・中幅(45cm)小風呂敷…金封包み・ティッシュ箱包み
・一尺三寸幅(50cm)…お弁当包み・ティッシュ箱包み
・二幅(68cm)一般的なサイズ…菓子折やワインボトルが包める
・二尺幅(75cm)…菓子折やワインボトルが包める
・二四幅(90cm)レジ袋や紙袋の代わりに結んでバッグにも…一升瓶が包める
・三幅(105cm)大きめの荷物を包むのに便利…衣装包み・テーブルクロスにも
・四幅(128cm)座布団2枚が包める大きさ…衣装包み・収納の包み・こたつカバー
・五幅(180cm)座布団5枚が包める大きさ…大きな荷物・収納の包み・インテリアなど
・六幅(205cm)布団1組が包める大きさ…ベッドカバー・ソファーカバーなどインテリアにも
バッグや紙袋はもちろん便利で使いやすいですが、風呂敷は包みたいものの大きさに合わせて自由に変化(へんげ)できるなどの利点があると思います。容量が決まったバッグと比べて、ものの大きさや形にも合わせやすくて、とても便利で懐が深いんです。それに、繰り返し使えますのでエコでもあります。畳んでしまえばコンパクトになりますし、お出かけの際に一枚、風呂敷を持っているとかなりいろんなシーンで役に立つと思います。
素材については、大きく分けると天然繊維と化学合成繊維の2種類です。天然繊維は絹や綿がメインです。化学合成繊維はレーヨンやポリエステルのもの、アセテートなどですね。
重いものや割れやすいものを包んで運びたいときは、綿の風呂敷がオススメです。しっかり包み、ぎゅっと縛ることができて安心感が高いです。ただ、大きさにもよりますが綿素材のものは少し厚手で重さがありますので、大きなサイズのものだとカバンに入れるときなど、少し持ち歩きに不便を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ポリエステルは比較的シワになりにくく、軽い・汚れにくいなどの特徴があります。機能性が付加された生地もたくさんありますので、目的に応じた使い方が出来るものが大きなポイントです。
▲デニム生地の風呂敷
大工原さん、ありがとうございます。風呂敷、と言う名前ではないにしても風呂敷が世界規模だったとは驚きです。素材もデザインも豊富で見ているだけでも楽しい気持ちになれそうですね。次回は「風呂敷と防災」についてお話を伺います。
取材協力:
日本風呂敷協会
http://www.japan-furoshiki.jp
風呂敷専門店 唐草屋
http://www.karakusaya.co.jp/tokyo.html
(防災士・アール)