2019年の気象を振り返る① ~小さくても凶暴だった台風15号~

新しい年号「令和」となり、今年2019年の一文字は「令」。消費税は8%から10%へ(軽減税率もあるけれど)。何かと盛り沢山だった2019年も師走に突入、あっという間に半ばを過ぎてしまいました。
2018年の一文字は「災」。忘れられない「平成30年7月豪雨」が発生。今年は平穏であってほしかったのに、残念ながら今年も大きな災害に見舞われました。
年末にお届けしている「気象を振り返る」コラム、今年は「台風」について2週に渡ってお伝えします。解説担当はがんちゃん気象予報士です。


今年は東日本でも「想定外」の…

これほど広域的な大雨被害は数百年に1度あるかないか…。
平成最後の年に平成最悪の豪雨被害となった「西日本豪雨」から1年。
災害のない穏やかな時代を願っていたはずの令和元年に、今度は東日本で過去に経験のないレベルの、まさしく「未曾有の災害」を目の当たりにすることになりました。

コンパクトでも筋肉質な台風15号

9月7日(土)、小笠原近海にあった小ぶりの台風15号は当時はまだ並の勢力で、9日未明に関東に接近・上陸の可能性が示唆されていたものの、週明け月曜日の朝にはすでに通り過ぎて、通勤通学の時間帯への影響は小さいのではというのが大方の見立てでした。

この台風は海水温の高いエリアを通過していたものの、小型の台風は寒気に触れると崩れやすくなるため、気象庁側の予測は慎重でした。

画像:気象庁HP

ところが8日(日)になると30℃以上の高い海水面温度の海域で勢力を強め、夜には東京都神津島村で58.1m/sの猛烈な風を観測するなど、非常に強い勢力にまで発達し、首都圏も昨年の台風24号に匹敵する記録的な暴風と大雨が心配され始めます。

そして9月9日(月) 台風15号は非常に強い勢力で3時前に三浦半島を通過、強い勢力を維持したまま午前5時前に千葉市付近に上陸しました。上陸時の勢力は関東としては過去最強クラスであり、台風は当初の予想より勢力が強まったことと転向時に速度が遅くなったことから、千葉市での57.5m/sをはじめとして多くの地点で観測記録を大幅に塗り替えることに。東電管内では一時77万戸が停電し、首都圏の鉄道網が軒並み運休となる事態に陥りました。

このような小型サイズの台風で、急激に風が強まり猛烈な風を吹かせた例は稀にあって、2004年の台風22号では伊豆半島に上陸し房総半島を通過する過程で、石廊崎で最大瞬間風速67.6m/sを観測し、横浜市では駐車中のトラックが強風によって横転し積み重なるという被害も発生しています。

台風15号は首都圏在住の人にとってみれば最悪な進路=東京湾を通過したことにより、台風の危険半円である千葉県側の房総半島で特に風が強まり、ゴルフ練習場施設の倒壊など、大規模かつ長期間の停電被害に繋がってしまいました。

千葉県上陸時の衛星写真(画像:気象庁HP)

千葉県上陸時のレーダー画像(画像:気象庁HP)左右対称のきれいな形を保ち、勢力が強いことを象徴しています

いまでも羽田に着陸する飛行機の窓から見渡せる房総半島や東京湾の上にこの積乱雲の渦の塊があって、あの猛烈な風を吹かせていたと思うと、何ともいえない気持ちになってしまいます。


今年のあの台風を体験し、「台風の恐ろしさを初めて感じた」と口にする人が周囲にもたくさんいます。ただ、令和の台風はこれだけではありません。次号では「台風19号」について解説していただきます。

(アール)

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