ミリ単位の吸血鬼「マダニ」から身を守るには?

前回はマダニについての知識を教えていただきました、では、なにをどのように気をつければ良いのでしょうか。害虫・害獣防除資機材の専門商社・鵬図(ほうと)商事株式会社・五十嵐さんに、具体的な対策について伺いました。

■ダニから身を守るには「下半身」の防御が重要

マダニが大好きなのは、柔らかい下草が生えているような場所です。吸血したい野生動物などに飛び移るには、あまり高い場所ではなく低い場所のほうが都合がよいですから。ですので、マダニから身を守るには「足元」を中心に防御するのが最も有効です。

衣服についたマダニは血を吸うために皮膚に向かいます。草むらや草が生えているエリアに入るときは、長ズボンの着用・ズボンの裾は靴下の中、シャツの裾はズボンの中に入れましょう。つなぎの服や長靴の着用が最も効果的ですね。

ちなみに冬の寒い時期はマダニの被害は少ないのですが、これは、寒いからマダニが少ない、ということではなく、人間が厚着になりマダニが皮膚に到着しにくくなること、寒い時期にはあまり山野に行かないことが主な理由だと考えられています。

■防虫は衣服の上から!

マダニに有効な成分としてDEETやイカリジンという、薬局やホームセンターで売っている防虫スプレーの成分があります。これらはマダニ忌避効果がありますので、肌に直接塗るだけではなく、衣服や靴の上から吹きかけると効果的です。DEETに関しては使用年齢の規制があったり、化学繊維を溶かしてしまう可能性がありますので注意が必要です。ストッキングなどには使わないほうがよいですね。

一方、イカリジンは比較的優しい成分でも忌避効果があり、使いやすくてオススメです。

■それでも噛まれてしまったら?

万が一、ウイルス感染しているマダニに噛まれてしまった場合、とにかく大切なのは「できる限り早く除去すること」です。感染症のウイルスは、ある程度の時間をかけて人体に侵入していきますので、早ければ早いほど感染のリスクを減らすことができます。

ただ、このとき気をつけたいことが“完全に除去する”こと。ちょっと手で払っただけでは、口の部分だけが皮膚に残ることもあります。マダニは食いついてしばらくするとセメント様物質を出して皮膚に固着しますが、そうなると自力での除去は難しくなります。

「できる限り早く、完全に除去」が大切ですが、医療機関に行くまでに時間がかかるようなら、自分でとにかくすばやく除去することを優先しましょう。

<マダニを自力で除去するには>

基本はピンセットを使います。マダニ固体の根元(口器)部分をはさんで、左右に何度か回転させたりマダニの身体を動かしたりし(抜けやすい状態にする)、慎重に引き抜きます。

・強引にむしりとるのはNG

口器がちぎれて皮膚の中に残ってしまう可能性があります

・除去したマダニは捨てないで!

 マダニ類に食いつかれて2週間以内に発熱・頭痛・発疹などの症状が出た場合は、マダニが媒介する感染症の可能性が考えられますので、できる限り早急に医療機関を受診してください。その際に除去したマダニの個体があれば診断がしやすくなります。(マダニ媒介の感染症は診断が難しいものが多いそうです。)

■ペットを守るには

前回もお話しましたが、最近では例えば高速道路のサービスエリアなどにもドッグランがあり、ウイルス感染している動物が多い地域で遊んできたペットと接触する機会が増えています。動物病院などで予防接種を行う、ダニ除けアイテムの着用、散歩後の丁寧なブラッシングなども大事です。市販の殺虫剤などでも駆除できますので、お使いいただくことも有効です。


服の上からもスプレーするとは、びっくり。防虫剤は肌の露出部分だけだと思っていました。五十嵐さんによると「とにかく草のあるところで肌の露出は厳禁」だそうです。草むしりや庭の手入れをするときも、手袋は必須!手袋せずに草むしりなんて言語道断!なんですね。

ちょっとした知識があれば、守れることがたくさんあります。ご自身はもちろん、お子さんをはじめ、大切な人をマダニから守ってあげてください。

鵬図商事株式会社・五十嵐さん、ありがとうございました。

取材協力:鵬図商事株式会社

(アール)

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