台風の上陸にこれほどおびえた年があったでしょうか。「逆走」「頻発」「超大型」…台風に関する新たな言葉をたくさん聞いた年でもありました。まさに「異例」としか言いようのなかった2018年の台風について、がんちゃん予報士に解説していただきます。
逆走台風12号
ふだん天気は一般的に西から東向きに移動していくものですが、今年は気圧配置が例年と異なっていた(高気圧の勢力の位置が北に偏っていた)ため、太平洋高気圧の縁に沿って北上する台風のコースも特異的となり、特に7月24日に発生し同29日に三重県に上陸した台風12号は、反時計回りに進む「逆走台風」となりました。
一昨年の平成28年8月末に観測史上初めて太平洋側から岩手県に上陸し、甚大な被害をもたらした台風10号の時と同じ構図で、西側に寒冷渦があったことなど、気圧配置に特徴的な点が類似していますが、もはや教科書に載っている台風の月別コースは参考にならなくなってきています。
7日平均500hPa高度(等値線) および平年偏差(陰影)
2018年7月25日~31日
改めて感じた都市圏暴風の脅威
8月末と9月初め、台風20号と21号は相次いで四国東部に上陸し、近畿地方を中心に近年まれにみる大雨と暴風の災害をもたらしました。特に最強クラスの勢力で上陸し(非常に強い勢力として上陸したのは25年ぶり)スピードに乗って北上した台風21号は、風台風としての脅威を見せつけられました。
【各都市の最大瞬間風速】
関西空港 58.1m/s 南南西 (13:38) [観測史上1位の値を更新]
和歌山市 57.4m/s 南南西 (13:19)
大阪市 47.4m/s 南南西 (14:03)
※全国で最大風速44地点、最大瞬間風速は78地点で観測記録を更新
台風の強い勢力に加えて、スピードアップして駆け抜けた台風の進行速度も加わり、特に風が強まるといわれる台風の東側(危険半円)に入るという条件が重なったため、ここ数十年来の暴風に見舞われた京阪神地区。大阪市内でも47.4m/sを観測し、看板が宙を舞い、車がひっくり返るなど、衝撃的な光景がリアルタイムに次々とSNSにアップされたことは大都市圏の災害として印象的で、午後1時過ぎから2時半頃は自宅にいる人がみな恐怖を感じていたそうです。関西電力管内だけで160万戸が停電し、大阪北部地震に続いて被害や影響も大きくなりました。
また、高潮も顕著で第二室戸台風を上回る過去最大級の潮位となり、和歌山県御坊市で3m19cm、神戸港で2m30cmなどを記録。関西空港は滑走路が水没したほか、制御を失ったタンカーが連絡橋に衝突し、空港島が孤立してエアコンの効かない空間で多数の乗客が夜を明かすなど、二次的な被害も大きくなりました。
大阪府夢洲地区のコンテナ散乱
咲州庁舎前
今期は風台風の当たり年なのか、9月末には台風24号が非常に強い勢力を維持したまま九州南部を経て、午後8時頃に和歌山県田辺市付近に上陸。岡山県では大雨により、西日本豪雨で災害となった小田川や高梁川で氾濫危険水位に。
夜には東海や関東でも風が強まり、首都圏の在来線は20時で運転取りやめるという本格的な計画運休を実施。日付が変わると関東でも猛烈な風が吹きはじめ、東京都八王子市45.6m/s、羽田空港で39.6m/sなど観測史上最大の暴風を記録しました。東京電力管内だけでも一時19万戸が停電したほか、倒木の影響などで台風通過後の朝の交通機関も大きく乱れました。大阪の例よりは若干風速は控えめですが、関東としても近年まれにみる暴風で、午前1時過ぎの屋外はかなり危険な状況でした。
がんちゃん予報士、ありがとうございました。
地方に住む友人から届いた、無事を知らせるメールに「台風で命の危険を感じたのは生まれて初めて」と書かれていました。建物ごと吹き飛ばされるのではないかという恐怖にまんじりともできなかったそうです。台風の事前対策についてはライフレンジャーでもお伝えしておりますが、今後も早め早めの対策をなさってくださいね。
(参考・一部画像出典:気象庁HP)
(アール)