秋を意識し始める頃、まだ緑色が濃い草の中にちょっとびっくりするほど鮮やかな、真っ赤な花が目をひきます。真っ直ぐ伸びた緑色の茎の上に、大きな花がひとつ。花をつけてから茎が伸び、葉と花を同時に見ることができないのもこの花あの特徴のひとつです。
とても多くの「呼び名」を持ち、地獄花(ジゴクバナ)、死人花(シビトバナ)、幽霊花(ユウレイバナ)、などというもう、文字を見ただけでも恐ろしげな名前から、毒花(ドクバナ)、痺れ花(シビレバナ)、剃刀花(カミソリバナ)、蛇花(ヘビバナ)という危なそうな呼び名、狐花(キツネバナ)、捨子花(ステゴバナ)…なんとまあ、花に罪はないのに気の毒としかいいようがありません。恐ろしい呼び名でその鮮やかな色彩がかえって不気味さを増すように見えますよね。
ですが、ヒガンバナと同じくらい名の通った別名「曼珠沙華(マンジュシャゲ)」の意味は、先に羅列した不気味とはまったく逆で、法華経などに由来する「天の花」から名付けられたもの。いずれにしても「彼方の世界」の雰囲気ではありますが…。
お彼岸で墓参りに行ったときにこの花を見ていることが多かったせいか、なんとな~く近寄りがたい花という印象ですが、調べてみると実際に「お墓のまわりに植えられた」花であることがわかりました。その理由が、ヒガンバナがもつ毒にある!ということなのです。
ヒガンバナは、球根・根・茎・葉・花のすべてに毒を持ち、特に毒性を強く持っているのが球根。昔、人が亡くなったらそのまま土葬していた時代、亡骸に虫や生物を寄せ付けないようにするためにヒガンバナを植えたといわれます。現代ではあまりそのような心配はないと思われますが、墓場にヒガンバナという光景は古き時代の習慣の名残なのかもしれないですね。虫だけではなく、人体にも影響が少なからずありますので、決して食べたりなめたりしないよう気をつけてください。
ちなみに、ヒガンバナは赤い花だけでなく白やピンク色のものもあるようです。色が違うとちょっと雰囲気も違うかもしれないですね。
(アール)