【天・気になるシゴト】旅雑誌の風景写真は青空!…のウラにあるハードな話

さまざまなお仕事と天気の関係をお聞きする「天・気になるシゴト」、第3弾はツーリング雑誌の編集長にお話を伺います。ツーリングといえば「バイク」=雨だと濡れる。雑誌=景色が雨だとイマイチ。とはいえ「締め切り」や「ロケ」など時間制限もかなりハードそう。天気とどのように付き合っていらっしゃるのでしょうか。
今回お話を伺うのはツーリング雑誌『アウトライダー』の編集長・菅生雅文さんです。

 菅生雅文さん

――『アウトライダー』は具体的にどのような雑誌なのでしょう?

ツーリングを趣味として生きる人のための「ツーリングマガジン」です。1986年に「旅とバイクとアウトドア」をテーマに創刊された『アウトライダー』が、32年の時を経て現在に至っています。

『アウトライダー』2018年6月号

創刊当時はバイクブームで、バイクに憧れ、旅に憧れ、自然の中に入っていくことを志向している若者たちとともに歩んできた32年です。今の読者の平均年齢が50代前半で、この数字は全国の自動二輪免許所有者の平均年齢とほぼ同じ。当時の若者ライダーが中年の年齢になっても乗り続けているんです。昔はピラミッド型で若者のほうが圧倒的に多かったんですが、今は逆…これは人口ピラミッドも同じですよね。

―― なるほど。それだけ読者とお付き合いが長い媒体なんですね。雑誌の編集長という立場として一番大変なのはどんなことですか?

大変なことはいっぱいありすぎて(笑い)。天気の側面から言うと、まず何が大変って、ツーリングマガジンだから、やっぱり写真も青い空・白い雲・緑の森、美しく咲く花々とか、そういう中で太陽の光を浴びてかっこよくバイクで走っているシーンを見せたいし、読者も見たいじゃないですか。

企画を立て、こういうものを撮りたい!をイメージして、ロケ(取材・撮影)の準備をするんですが、前もってカメラマンやライターをはじめ、さまざまなスタッフのスケジュールをおさえ、それに合わせて撮影用のバイク(車両)をメーカーさんからお借りしたり、他にも必要なものを用意します。

雨が降った場合のことを考えて、撮影用バイクはロケの前後少し長めに借りますが、返却日には当然、お返ししないといけない。スケジュールを組むのが大体ロケの2週間以上前だから、天気が予報と変わることも多々ありまして。その期間に晴れるとは限らないわけですよ。

 写真提供:『アウトライダー』(撮影:柴田雅人さん)

―― そうですよね、撮影となるとその辺すごくシビアですもんね。

はい。それで、1週間くらい前になって初めて週間予報で「ロケの日程がどうやら雨っぽい」ということになってくると、内容の見直しが始まります。例えば、この日は山岳ワインディング(カーブが続くダイナミックな峠道など)で撮影しようと思っていたけど、雨になりそう。じゃあ室内ロケで済ませられるような観光施設とか旅館などに変更して、山岳風景を翌日に回すとか…。こんな感じで1週間前から練り直しをします。
取材先のお店などにもアポイントをとっていたりするので、「すみません、雨が降りそうなのでその翌日にお願いします」となると、それが定休日にあたったりすることもあります。

―― 取材に出てしまってからの対策としては、どのようなことをされていますか?

今はお天気アプリがあるから、ロケ先で小まめに天気予報を見ながら、「予定通りこのまま山に行っていいぞ」とか「今から海、大丈夫!」など、ある程度の予測がつけられています。けれど予報はあくまで予報ですからね、ずれた場合は行き先を変えたりします。
それに曇っていると写真がいい色にならないので、太陽と雲の流れを見ながらいつシャッターを押すかとか、“太陽待ち”をしたり。

―― 太陽待ちですか!その最中はどんな気持ちになるんでしょう?

こればっかりはお天道様次第ですからね。待ちますよ、祈りながら。まず「ここで撮れば最高の写真が撮れる!」ってポイントを見つけることから始まるから、見つけたところから“太陽待ち”になるんです。

天気に関してはどうにもならないときもあるので、そんなときはいっそ開き直って「じゃあ雨でかっこいい写真を撮ってやるわ!」って。タイヤが跳ね上げる水しぶきとか、濡れたバイクの上で光る水滴とか、あるいはレインウエアを着てでも雨の中を走っていくライダーのスピリットなどを表現したりして。雨はいずれ上がるから、そこで晴れ渡った写真を撮ればリアリティも増すんじゃないかと、ドキュメンタリータッチに変えていったりします。

― 常に天気を見ながらの真剣勝負、といった感じですね。そうすると企画を立てられる頃、例えば3~4週間前に、ある程度“確実な(精度の高い)”天気がわかる、というのが理想ですよね?

いつかそんな時代がくるのかなあ?でも昔に比べたら、天気に関してかなりラクになりました。週間天気予報の精度が上がったし、雨雲レーダーもあるでしょう、今は。


限られた取材時間の中で、読者に納得のいく写真を撮影するために、天気アプリや雲と格闘されていたとは…大変なお仕事だということがよくわかりました。菅生さん、ありがとうございました。

取材協力:『アウトライダー』編集長・菅生雅文さん

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