300年待つ? 代わりに、台風経路アンサンブルシミュレーション

「台風ソラグラム」を共同研究した横浜国立大学・筆保弘徳准教授シリーズ4回にわけて紹介します。第2回は「300年待つ? 代わりに、台風経路アンサンブルシミュレーション」です。

横浜国立大学・筆保弘徳准教授


どの経路を通る台風が最も危険性が高いのか?

その難問を解くには、様々な経路の台風が通過した時の風のデータがたくさん必要となります。そこで我々は、「台風経路アンサンブルシミュレーション」という特殊な手法を実施しました。コンピュータの中の仮想的な世界で、台風を含む大気と日本列島の位置関係を少しずつ東西にずらす操作をし、異なる経路を通る架空の台風を作り出してシミュレーションするという実験手法です(図2)。

まさに、台風のクローンです。我々が実験対象に選んだ台風は、実際に強風災害をもたらした台風8ケースで、それぞれの台風のクローンを人工的に約120ケースずつ作りだしました。そして、1000ケース以上のクローン台風を意図的に日本に上陸させて、日本各地の風のデータをたくさん得ることに成功しました。現実の世界で考えると、地上5㎞おきに観測器をくまなく配備して、およそ300年間以上(注5)かけて台風観測をしたことになります。

図2:伊勢湾台風(1959年)をモデルにし、台風経路アンサンブルシミュレーションにより、複数のクローン台風を作成した図。赤が伊勢湾台風、黒がクローン台風の経路結果。


注5:年間でおよそ3ケースの台風が上陸していることで推定しています。


第1回
全国版台風ハザードマップへの挑戦!>
第2回
300年待つ? 代わりに、台風経路アンサンブルシミュレーション>
第3回
完成! 全国版台風ソラグラム>
第4回
台風ソラグラムの展望>

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