■これさえあれば、私だって飛べちゃいそう
先日東京でも「木枯らし1号」が吹きましたね。地球上にはさまざまな「風」が吹いていますが、木枯らし1号や春一番のような、季節を感じさせる風、台風や竜巻のような災害をもたらす風…風にもいろいろあるけれど、グライダーのように「飛ばす風」もありますよね。
今回はこの「飛ぶ」に注目してみたいと思います。
実はまだ解明はできていない点もたくさんありますが、オキノタユウ(アホウドリ)がどのように風を使って飛んでいるのかを調べてみました。
■「オキノタユウ(アホウドリ)」の生活史
まずは、このオキノタユウという鳥について。
全長 92cm、翼開長(全幅)2.4m の大型の海鳥で、体重は約7kg にもなり、グライダーのように細長い翼を持ちます。
10月下旬から11月中旬に、一腹にただ1個の卵を産み、12月末~1月中旬に孵化、5月下旬~6月の初めに海へと旅立ちます。繁殖期に10月下旬ごろ再び繁殖地に戻ってきます。
揚力を生みやすい「細長い翼」と「風」をフル活用して大海原の旅をします。
■風の使い手「オキノタユウ」
オキノタユウの飛翔には風が必要で「風」の特性を積極的に利用して海上を飛翔しています。陸上よりも気流が乱れにくい海上で飛ぶためには、風を捕まえることがとても重要。
オキノタユウのような大型な鳥は、上に向かって吹く上昇気流を捉えないと海に落ちてしまいます。
常に一定の方向に吹き続け、高度によって風速に差のある海の風を利用する事をオキノタユウは考えました。(※1)
それが向かい風と追い風を交互に使う滑空法(ダイナミックソアリング)です。
風の特徴をよく捉えた「ダイナミックソアリング」で飛翔することで、オキノタユウは数千キロを休まず滑空できる飛行能力を持つことができるようになりました。
※1
・海の風は陸地と違い障害物(建物や山など)がないので風が一定に吹く。
・風は地表の摩擦や地形による影響がなくなる高度が高くなるにつれて強く吹く。
■オキノタユウの能力は人間社会にも活用できる?!
まだナゾが多いとはいえ、数千キロを休まず滑空できる高い飛行能力を持つオキノタユウは、航空機の設計者たちから注目を集めています。生物学と航空工学を組み合わせた研究でそのしくみが解明されつつあり、次世代の革新的な航空機開発につながる可能性があるそうです。
■オキノタユウに緊急問題発生中!!
大学時代に生物学を学び、その後気象予報士の資格を取った私は、生物と気象の関係に興味しんしん。大学時代は絶滅が危惧されているアホウドリについても関心を持っていました。そこで、アホウドリの飛翔の関係性について、「風」を軸に調べてみました。「風」を上手に使って飛行をする能力は本当にすばらしく、能力の高さを伺えます。
そして、アホウドリ類の大部分の種が、いま、絶滅の危機に立たされています。オキノタユウは美しい鳥です。この美しい鳥たちの命をうばう権利は誰にもありません。
また、保護の取り組みは各所で行われています。直接参加することはできなくても、「絶滅危惧種」この事実を知るということが絶滅をとめる第一歩になるのではないでしょうか?
(2016/11/18 00:00更新)