地元のハザードマップについて、どのくらいご存知ですか? 地震が来たときと、水害が心配な状況になった時では、同じ場所でもリスクの種類が違います。ハザードマップにはどのような情報があり、どんな活用をすればよいのでしょう。ハザードマップポータルサイトを運営している国土地理院・諏訪部さんにお話を伺いました。
ハザードマップポータルサイトについて
平成18年6月に策定された「国土交通省安全・安心のためのソフト対策推進大綱」が公表され、国民のみなさまの安全安心のために、電子ツールを活用しようということでこのポータルサイトの運営を始めました。ハザードマップの普及・活用を推進できるよう、インターネットで閲覧・検索できるようにしたものです。
ハザードマップに記載されている情報は、災害発生時に見ていていただくことも必要ですが、発生してから見るのでは遅いんです。自然現象は我々に時間の余裕を与えてくれません。気象庁でもかなり長期的に予報できるようになっているので、事前に対応できることが増えました。災害がない平常時に、いま住んでいる場所の災害リスクをしっかり熟知して災害に備えてもらいたい・命を守ってもらいたいという思いです。ぜひ積極的に活用していただきたいと思っています。
ハザードマップの課題について
情報をいっぱい詰め込むと何が重要なのかわかりにくくなってしまいますし、逆に簡単にしすぎると重要な情報が抜けてしまいます。ハザードマップを作る際は、このバランスをどうするかが大事です。
技術の進歩によって今までできなかったことができるようになり、我々もいち早くそれを取り入れていきたいと思っています。ただ、情報を多く取り入れたらその分重くなるなど常に「障害」とのせめぎ合いになりますね。
ハザードマップに関して言えば、まずは「知られていない」というのが目下の課題。知られても使えない・わからないという声も多く、これに関してどのようにしてわかりやすく伝えていけばよいか、これが課題になっています。
危険を知らされても、避難を促されても「逃げない」のは?
“リアリティがない”というのが一番大きいかもしれません。加えて、よくいわれる“正常性バイアス”…「自分は大丈夫」と思ってしまう人間の心理です。
私自身、防災セミナーの講師としてみなさんにお話する機会がありますが、各地域の方が「ここにはどのような災害が起こるのか」ということをもっとリアリティを持って感じてもらえたら、逃げるという行動に移してもらいやすいのではと感じます。
東日本大震災の津波に関しては、私も含め多くの方が「津波」に関して、リアリティを持っているとはいえない状況でした。土砂災害や土石流は資料も多いので理解しやすいし、危険性を想像したりリアルに感じたりする素材がたくさんあります。でも津波に関してはそれが殆どなく、知識として頭ではわかっているけれど、よく言われる「自分ごと」として捉えるには少し厳しい面があったのではないかと思います。
しかしながら、リアリティがある、ないではなくて実際に何か起こってからでは遅いんです。また、災害があった場所だからといって昔からの土地を離れることが難しいケースも多々あります。前回にもお話しましたが、今の代の人が経験した災害を、孫やひ孫の時代には忘れ去られてまた災害に遭ってしまうことも少なくありません。ただ、日本の地形や土地の成り立ちを考えると、日本中どこでも「災害が絶対に起こらない」場所はないと言っても過言ではありません。だからこそ、リスクを把握して対処を万全にする、そのための重要な参考資料としてハザードマップがあります。
災害から命を守るためには、身のまわりにどんな災害が起きる危険性があるのか、どこへ避難すればよいのか、事前に備えておくことが重要です。防災に役立つさまざまなリスク情報や全国の市町村が作成したハザードマップを、より便利により簡単に活用できるようにするために公開しているのが「ハザードマップポータルサイト」です。
ハザードマップポータルサイトの使い方はこちら(PDF)
国土地理院の皆さま、貴重なお話をありがとうございました。お話を伺って、改めて自分が今住んでいる地域のハザードマップを広げてみました。我が家から一番近い避難所の位置と、そこに行くまでの道のり、途中で想定される障害などを確認しながら歩いてみると、ハザードマップの重要性が身にしみて感じられます。
情報はたくさんあり、発信もされています。国土地理院も気象庁も自治体も、そしてライフレンジャーも、立場や役割はそれぞれ違うけれど「命を守ってほしい」「災害の犠牲者にならないでほしい」という思いで情報を発信しています。災害はいつどんなときに襲ってくるかわかりません。知っていないとできないことがたくさんあります。どうか、発信されている情報をしっかりキャッチして、ご自身や大切な人の命を守るために役立ててくださいね。
取材協力:国土交通省 国土地理院
(アール)