【天・気になるシゴト】お茶の大敵は「霜」だった!

風邪やインフルエンザが流行する季節になると、さまざまな有効成分が話題になりますが、私たち日本人にとって縁の深い飲み物に含まれる「カテキン」も大きな話題になりましたよね。その飲み物とは、そう、「日本茶」です。日本茶は静岡県、鹿児島県など、国内にいくつか産地がありますが、今回は東京から近い埼玉県のお茶製造販売会社・法師園さんをお尋ねしました。

法師励(ほうし つとむ)さん

―― お茶の栽培はどのように行われているのでしょうか?

年間を通して主に挿し木・防除(ぼうじょ)・施肥(せひ)・株ならし・摘採、などの作業をしています。もちろん夏場は草取りもしますし、雨の多い時期には殺菌なども必要になります。年間を通じて一番忙しいのは4月上旬~5月中旬頃ですね。この頃、一番茶の摘採時期になりますので。

―― 一番茶、ということは、二番・三番もあるのでしょうか?

はい。お茶は年間に3回程度収穫できます。一番茶が最も価値が高く美味しいんです。通常、一番茶は5月上旬で、その後株の刈り揃えをして50~60日後に二番茶を摘みます。これが大体6月半ばから7月半ば。その後、10月に摘むお茶は「秋冬番茶(しゅうとうばんちゃ)」と呼ばれ、加工茶(ペットボトル)の原料などになります。うちでは作っていませんが、三番茶を8月に摘むところもあるんですよ。

―― いわゆる5月の新茶が一番美味しい、ってことですか?

秋冬番茶を収穫しない場合は、二番茶を収穫した後から翌年の一番茶まで約10ヶ月養分をためますからね。高級茶になると一番茶しか収穫しません。
ちなみにお茶業界では「その産地で最も早く出荷された茶葉」は芽が柔らかく価値が高いとされています。

―― お茶栽培において、気象が関係するのはどんなことでしょう?

なんといっても霜ですね。茶葉が(萌芽期)をへて芽が開いて(開葉期)から摘採するまでに霜がおりると大変なことになります。霜そのもの、というよりは、霜が降りたときに新芽が凍ってしまい、新芽の柔らかい部分が凍傷害を起こしてしまうことが問題なんです。そうすると新芽が茶色(焼けた状態)に変化して高級茶になりません。

雨が降らない、というのも困りますね。年間に何度か肥料をまくのですが、肥料をまいた後に雨が降ってくれないと土に吸い込まれないというか、肥料の意味がなくなってしまうんです。肥料をまく時期も限られていますし、天気予報とにらめっこしながらの作業になります。乾燥しすぎるとダニの心配をしなくてはならないし、多すぎると殺菌をしなくてはならなくなりますし・・・雨に関してはいろいろと心配ごとが増えますね。

―― お茶の葉が、いわゆる「お茶」として販売されるまでにはどのような工程があるのでしょう?

1:荒茶工程
いわゆる粗茶(あらちゃ)から煎茶にするまでは、いくつかの段階があります。粗茶とは、摘んだ茶葉を蒸して揉んだ状態で、茶葉のほかに茎や粉なども混じった状態の原料のことです。

2:仕上工程
① 大きさを揃える
選別する機械をまわしながら&ふるいながら(縦ふるいとまわしふるい)、茶葉の大きさ・長さを揃えていく。
② 選別する
特殊な光を当て、茶葉以外の茎などをはじく。
③ 火入(ひいれ)
乾燥と火入の2段階がある。この段階でお茶の味や個性が決まる。
※狭山茶は火が強いといわれる個性がある。
④ 異物の除去
特殊な光を当て、さらに茶葉以外のものを除去する。

⑤ 計量・袋詰め
決まった分量を量り、袋詰めして出来上がり。
※この段階でウエイトチェックや金属探知機にかけるなどさらにチェックが入る

中でも③の火入では、お茶の味が決まりますので時期によってかなり調整をします。例えば新茶の時期には、新茶の風味を生かすため、火入はしないんです。一方、夏になると新茶の風味は好まれませんので、徐々に火を強くしていく感じですね。
うちではあまり火は強くしないのですが、先ほども少しお話したように狭山茶は「火が強い」といわれますので、他の地域よりは強めなのかもしれないですね。


なるほど!霜がお茶に影響するとは、驚きでした。次回もお茶についてお聞きしたいと思います。法師さん、ありがとうございました。

取材協力:法師園

(アール)

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